〒519-0181 三重県亀山市みずきが丘3番地10
JR井田川駅から徒歩で40分、車で10分/駐車場:あり(2台))

お電話・FAXでのお問合せ・ご相談はこちら

090-7312-7407

0595-83-5030

COD除去とは?

はじめに

 COD除去とは、廃水の水質を表す指標のひとつ、COD(単位:mg/ℓ)の数値を下げることです。

このページでは、

COD値を下げるとはどういうことなのか

なぜ、COD値を下げる必要性があるのか、

当社の提案する浄化処理方式とは、

などについて記載しています。

(COD値を下げるにはどんな方法があるのか、は別のページに記載することにします。)

内容が難しいと思われる場合、先に下記のページへお進みください。

生物処理法(活性汚泥法)とは?(整備中)

このページの目次です

 COD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量)除去とは、

日本の水質規制の主要な項目のひとつCODMn値に反映する物質を除去することです。

日本では、「CODMn」を「COD」と省略して記載することがあります。

※3種類のCOD測定方法について

JIS規格では3種類のCOD測定方法(CODMn法、CODOH法、CODCr法)を示しています。

検査対象のサンプル水のCOD値とは、

日本では、通常、100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODMn法)を指します。

一部、工業用水やノリ養殖関連では、CODOH法が採用されるようですが、

世界で一般的なCODCr法は、ほとんど採用されません。

CODCr法は、酸化剤として二クロム酸カリウムを使用し、有機物のかなりの部分を酸化できますので、

CODMnより数値が高くなります。

日本では、より強力な酸化剤CODCrではなく、CODMnを採用したことには、

微生物による生分解可能な汚濁物質(主に有機物質、一部の無機物質)を表す指標として、

汚濁物質を分解するため、微生物生存のため、必要な酸素量を示す指標としてBOD値があるのに対し、

生物分解不可能な有機物質は「酸素消費」という環境問題の原因物質では無いため

環境基準をはじめとして環境規制の対象としなかった経緯があります。

なお、いずれのCOD測定法でも酸化剤は還元されます。

還元とは、物質が電子を受け取る化学反応、

具体的には、物質から酸素が奪われる反応、あるいは、物質が水素と化合する反応を含みます。

 

参考までに、日本の水道水の「水質基準」の場合、

かつてはCODMnで水質規制していましたが、

2003年(平成15年)、CODをやめて、TOC(全有機炭素、単位:mg/ℓ)採用を決定しました。

これは、CODMnでもCODCrでも、汚濁物質によって酸素消費量がばらつくため、

特定の酸化剤(過マンガン酸カリウム)による酸素消費量ではなく、

水質を表す指標の対象を

有機物には含まれる炭素量に変更したということになります。

あらためて確認しますと、COD値に反映する物質は、

一部の難分解性有機物(この物質がBOD値に反映しないとして)も数値に反映する場合がありますが、

後述の天然合成高分子化合物を含め、一部の難分解性有機物については、反映しないこともあります。

具体的には、高等植物(≒木)の木質物質として植物細胞壁を構成する主要成分、リグニンなどです。

リグニンは、自然の循環サイクルの中で、相当な時間をかけてゆっくり酸素を消費すると考えられます。

また、無機物の被酸化物質(亜硝酸塩,鉄(Ⅱ)塩,硫化物など)であっても、酸素を消費しますので、

COD値には反映します。

CODとは、

とにかく、水を悪化させる一番の原因は、時間をかけてじわりじわりと水中の酸素を消費すること、

(酸素を消費する原因は、水中の微生物の活動や水中での何らかの化学反応などが考えられます。)

言い換えると、微生物分解が困難な汚濁物質を含む廃水は、少しづつ時間をかけて水中の酸素を消費してしまう、

(BOD値に反映する汚濁物質は、COD値だけに反映する物質と比較して、易分解性で、短時間で酸素を消費します。)

酸素が溶け込んでいない水は、どんどん水質が悪くなってしまう、

したがって、

どの程度の酸素が消費される排水なのか、ということを表すための水質評価の基準となる指標です。

COD値が高いと、時間をかけて水中の酸素を“たくさん”消費する、ということになります。

その他、

COD濃度が高いことで、周辺の生物が受ける悪影響について、生育結果を基にした基準値も公表されています。

(水稲の農業用水基準などがあります。ただし、悪影響を与える明確な過程までは解明されていません。)

なお、COD値の正式な方法での計測時間は、化学物質を使用した試験ですので、最短では30分~1時間程度です。

また、精度は低いですが、パックテストという簡易な測定法も一般に認知されており、数分で測定できます。

 

 一般的に、人為的な汚染がない場合、

河川や湖沼でも、降水後などの特異なケースを除き、自然の浄化作用(=自浄作用)が働きますので、

水理現象が無い状態では、COD値は1mg/ℓ以下程度と考えられています。

水中でCOD値に反映する汚濁物質は、ほとんどの場合、人工的汚濁を起源とするとも推定できます。

 人工的な汚濁物質の内、特に問題になるのは、(水溶性あるいは分散系の)合成高分子化合物です。

人工的汚濁物質含有廃水の内、合成高分子化合物含有廃水は、

一般的に、BOD値にはあまり反映しませんが、COD値に良く反映するため、分解が困難な廃水と言えます。

難分解物質排水とは、主に、(水溶性あるいは分散系の)合成高分子化合物を多く含んだ廃水のことです。

※低分子であっても、分子間の結合強度が強い合成化合物を含む場合、分解が困難になります。

廃水の種類は、業種によっても様々ですが、

原水のCOD値がBOD値の数倍あるような、非常に浄化が困難な廃水もあります。

 合成高分子化合物は、先述のように、CODに反映してもBODには反映しにくいあるいは反映しない傾向があります。

なお、BOD値に反映する物質は、COD値にもほとんど反映する(=数値がBOD値よりも高くなる)傾向があります。

人工的汚濁物質であっても、BOD値に反映しやすいと、生物による浄化(分解)が比較的容易な部類に入ります。

視点を変えると、BOD値に反映しにくい物質は、微生物が5日間ではエサとして消費できない、ということです。

一般的に、廃水浄化処理施設で、廃水が処理水槽に滞留する時間は、24時間前後が多いのではないでしょうか。

つまり、これらの物質は、通常の生物処理法だけで分解・除去することが出来ない、に等しいことを意味しています。

繰り返しになりますが、

これらの物質とは、COD値には反映し、BOD値にはあまり反映しない物質を含んだ廃水のことです。

しかし、分解・除去しないでそのまま放流するわけにはいきません

 

ただし、

天然高分子化合物のひとつ、フミン質類(先述のリグニンなどの分解が進んだ物質)については、

いろいろな考え方があるようですが、

自然生成物ですので、

飲用水の原水ではなく、

廃水を浄化処理する段階では、

フミン質類を浄化する必要性については、もっと検証する必要がある、という指摘もあります。

詳細は、後述します。

 合成高分子化合物を多く含んだ廃水というものは、つまり、COD濃度が高い(BODに反映しにくい)廃水は

 
時間をかけて水域中の酸素を消費し続け、廃水が存在する周辺の環境に、
 
連鎖的に派生して悪影響を与えるため
 
可能であれば、出来るだけ排出する現場で(=廃水の汚濁濃度が濃い段階で)、
 
浄化処理することが原則です。
 
廃水浄化処理の原則は、都市部を除き、出した場所で浄化処理して、自然界へ戻してあげることです。

 合成高分子化合物とは、

人工的に合成された(=合成)、

その物質の性質を示す最小単位の「分子の大きさが大きい」(=高分子)、

2種類以上の元素が化学反応で結合した物質(=化合物)

のことです。

「分子の大きさが大きい」とは、分子量が大きいことを意味し、

分子を構成する原子の総数が分子量のことです。

高分子に明確な区分はなく、分子量が1万程度になると高分子とみられます。

 

現在では、自然界に存在する物質のほとんどを人工的に合成できるようになっています。

もともと、いろいろな生産あるいは製造現場では、天然物質を使用していたはずです。

しかし、天然物質よりも、単価が安く、多量に生産でき、加工しやすく、軽く、物性変化がしにくく・・・

というようなことを求めた結果、

人工的に合成した半合成品や合成品に代替するようになっていったというところです。

 

分子量が大きいと、その合成化合物を分解するのに時間がかかりますので、その物質は変化し難い傾向になります。

ちなみに、浄化の対象になる合成高分子化合物も天然の汚濁物質と同じく、

その分子構造は、主に、炭素・水素・酸素、次に窒素や主要ミネラルのイオウなどから構成され、

さらに分解が進めば、最終的には水と二酸化炭素等になります。

 

 塩素が含まれ、さらに、塩素化数が多ければ多いほど、分解は極めて困難になる傾向があります。

例として、ダイオキシン類、PCB、DDT、BHC、ドリン剤など、たくさん挙げられます。

合成化合物の安定性は、

分子量の大小以外に、

①微生物に対する有毒性、

②結合強度(共有結合>イオン結合>金属結合、水素結合>ファンデルワース力による結合)、

③結合強度と生分解性能の関係など、

さまざまな要因があり、相対的という側面があります。

 

 現在では化審法(「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」)などの法律が整備され、

いろいろな製造業者や業界も環境に配慮した製品を作らなければ、世の中に受け入れられない時代です。

したがって、製造業者が、いろいろな製品(各種薬品・各種化粧品・各種生活用品など)を販売し、

消費者が使用した後の環境への影響を考慮しない製品は、ほとんどないものとも考えられますが、 

現実には、各地で様々な問題が発生しています。

詳細は、後述します。

 

 合成高分子化合物の内、浄化処理の対象になるのは、水溶性あるいは分散系の物質です。

具体的には、人工のり、インク、化粧品、洗剤など人工的に生産されるもので、

水溶性あるいは分散系の物質ならほとんどの物質が該当します。

 本来は廃水浄化の対象にならないはずであったPCBなどや、

分散系の対象となり得る固形の合成高分子化合物も含めて考えると、

合成高分子化合物は、ありとあらゆるところで使用・利用されていますので、

合成高分子化合物は、現在では社会になくてはならない物質(部材・資材)であり、

現代社会を支えている物質ともいえます。

 このページで廃水浄化処理の対象とするのは、
 
(水溶性あるいは分散系の)合成高分子化合物で、化学では「溶質」あるいは「分散質」が該当しますが、
 
基本的には、どんな物質でも、浄化の対象になり得ます。
 
※後述しますが、PCBなどの疎水性・親油性などの物質であったとしても、最終的には、
どんな物質であっても、浄化処理の対象物質になり得ます。
 
 
 懸濁物質とは、一般的にSS(エスエス:Suspended Solid)と呼称している指標のことです。
 
SSとは、水中に懸濁している不溶解性物質のことで、
 
JIS規格では懸濁物質と呼び、
 
環境基準や排水基準では浮遊物質と呼びます。
 
SSとは、簡略すると、2mmのふるいを通過し、孔径1μmの濾過材上に残留する物質、と定義しています。
μ(マイクロ)とは、「100万分の1」を意味します。
1mは100cm、100cmは1,000mmですから、1μmは0.001mmになります。
 
CODを測定する際、SSも検査の対象物質に含みますが、
 
廃水浄化処理施設の現場では、浄化が十分進むと汚泥に吸着され、処理水に混入し難くなります。
 
したがって、浄化処理が十分進行した浄化処理水の場合、SSは含まれにくいということになります。
 
なお、排水処理で使用する各種の指標は、
 
JIS規格による測定方法と測定の細かい手順が定められており、
 
詳細な測定方法は、日本産業標準調査会(JISC)のウェブサイトで個別に閲覧が可能です。
 
 
 
 粒状物質であっても、
 
孔径1μmの濾過材を簡単に通過するようなコロイド状の物質、
 
天然物質で例えると、
 
塗料の類の墨汁(固形物)、
 
食品では乳製品に含まれるような類の脂肪やたんぱく質(液状)、
 
などのように1nm程度になると溶解性物質の分類です。
n(ナノ)とは、「10億分の1」を意味します。
nとは、μの1,000分の1でもあります。
 
簡単に孔径1μmのろ紙であっても通過しそうなのが想像できます。
 
「溶解している」と「分散している」の境界は微妙なのです。
 
水は、化学でいう溶媒もしくは分散媒ですが、水素と酸素からなる分子です。
 
水素や酸素を粒子として考えることもできます。
 
後述するマイクロバブルのブラウン運動は、
 
微細な気体が、水素や酸素などに衝突して、水中をさまよっていると考えられています。
 
このページで対象とする合成高分子化合物の単体の大きさは、100nm未満程度の大きさと推定できます。
大きさを表す単位について

 では、人工的汚濁物質と自然由来の汚濁物質の違いは、何でしょうか?

基本的には、水中に溶解もしくは分散している物質の分子量の大きさ結合の強さによることになります。

加えて、自然界ではありえない高濃度・多量に排出されること(=浄化処理速度が追い付かない)、などによります。

 

 人工的な汚濁の原因は、

①急増した人が排出するし尿(=尿や大便)や生活排水(=台所・洗面所・風呂場・洗濯場などからの排水)、

②各種製品や製品のもとになる合成物質などの製造工程、あるいは製造時の副産物などから生じるもの、

③製造後の洗浄工程で排出される洗浄水、

④工事等を起源とするもの、

⑤自然ではありえない効率性を求めた農業・畜産・養殖などの余剰な肥料・飼料・餌料を起源とするもの、

など様々です。  

 

 先述のように、人工的に生産された物質は、分解しにくい(≒微生物による分解が困難な)傾向が強くなります。

汚濁物質を微生物が分解する際の難易度は、主にその分子構造の大小、さらに分子の結合強度などが関係し、

分子構造が小さければ、微生物は直接自身の細胞内に取り込んで体内酵素で分解し、吸収することができますが、

分子構造が大きな高分子化合物は、直接では微生物が体内に取り込めないので、低分子にする必要があります。

分解するため、一段階の余分な工程を必要とすることが、難分解性物質に分類される理由のひとつです。

ただし、合成高分子化合物(人工的な高分子化合物)は、低分子化することも困難な傾向があります。

 

汚濁物質が微生物によって分解される(生分解)の順序は、概略は、次のようになります。

無機質(元素記号であらわす物質や一部はその化合物)や低分子化合物(ブドウ糖類やアミノ酸類など)は、

水に溶けるだけで分解(加水分解)し、微生物の細胞内に取り込まれ、体内酵素で分解され、吸収されます。

つぎに、加水分解しない高分子化合物は、

そのままでは大きすぎて微生物の細胞内に取り込めませんので、微生物は分解酵素を細胞外に分泌し、

この酵素が高分子を低分子に分解することで細胞内に取り込むことができます。

 

実際には、

いろいろな微生物が相互に関係し、複合的に汚濁物質の浄化(分解・吸着・結合・沈降)が進むと考えられています。

 自然環境を起源とする汚濁であっても、高分子化合物(天然高分子化合物)は多く存在します。

天然高分子化合物は、タンパク質、糖質(炭水化物)、脂質、核酸、フミン質などです。

水溶性もしくは浮遊・懸濁(分散して存在)して排水中に存在する場合、一応は浄化処理の対象の汚濁物質です。

天然高分子化合物に限らず、自然界の物質は、分解と合成を繰り返し、ほぼ循環しているといえます。

 

 天然高分子化合物の内、分解が困難な物質としてフミン質類があげられます。

水中のフミン質は、透明感がありますが、紅茶のような、多くは黄色から茶褐色に染まった状態です。

フミン質類は、植物などが微生物による分解を経て生成される最終物とされるほどの難分解物質です。

具体的には、

飲食物では発酵を伴う紅茶やウーロン茶の抽出液、

草食動物の中では、馬などと比べて消化吸収が進む牛の排せつ物を浄化処理した排水など、

(通常の浄化処理であれば、一定程度のフミン質は残るため、透明感のある紅茶~黒褐色の排水です。)

自然界ではオーストラリアのバサースト湾(ネット動画で確認できます)などが該当します。

しかし自然生成物質ですので、廃水を浄化処理して放流する段階では、特段の問題にはなりません。

問題となるのは、水道など飲料水の原水として利用される場合に限られ、

次の2点です。

1、上水道や工業用水の原水の取水源にフミン質が含まれていると、色度として残ります。

  水道水の色度の原因は、鉄、マンガン、フミン質(紅茶の茶色のようなもの)がほとんどです。

2、塩素剤による消毒をすると、原水にフミン質が含まれている場合、トリハロメタンを生成します。

  トリハロメタンは、発がん性など人体への悪影響の疑いがあるという指摘があります。

  水道水は、水道法によって、残留塩素、トリハロメタンの基準値が定められています。

フミン質については、自然界での役割・効能について、さまざまな研究報告がされています

 したがって、

 フミン質が除去対象になること、

 残留塩素の考え方、などについて、

 廃水を浄化処理する段階の場合、

 水道水など飲用水の水源の場合で、

 それぞれ再考・検証の機会が必要になるのかもしれません。

 先述しましたように、

「一般的に、人為的な汚濁がない場合、河川だけでなく湖沼でも、特異なケースを除き、COD値は1mg/ℓ以下。」

とすれば、自然界では、天然高分子化合物の場合は、問題なく循環を繰り返しているのだろうと推定できます。

 

 したがって、

天然高分子化合物の場合、

基本的には微生物によって分解利用される対象物質ですので、

多量に排出されて分解が追い付かない場合を除いて、浄化処理が問題になることはない、と推定できます。

 

なお、生活で使用される程度の合成高分子化合物を含む廃水(=し尿や雑排水だけの浄化処理は

現在では、

必要な水槽容積があれば、生物処理と重力沈殿槽だけで法律規制値以下の浄化処理はできる、というのが通常です。

また、

管理者の考え方次第では、し尿や生活排水だけの浄化であれば、かなり清澄な水質まで浄化できます

 しかし、いろいろな製造業で使用される合成高分子化合物は、

 
そもそも出来るだけ物性変化(物理的化学的劣化)しないことを目指して製品化されているのですから、
 
分解するのが困難、かつ、時間を要する、などとなるのは当然ともいえます。
 
したがって、多量・高濃度に排出された人工的廃水は、さらに浄化処理が困難になります。

 以上のように、

そもそも、高濃度・多量の合成高分子化合物が溶解・分散した廃水を生物処理だけで浄化するのは無理があります。

そうすると、生物処理法を採用していても、生物処理法以外の機能を新たに付加することが必須では?となります。

すぐ思いつくのは、加圧浮上槽、砂ろ過装置、活性炭ろ過装置 膜などの分離装置や凝集剤などの薬剤です。

※上記の生物処理法以外に思いつくさまざまな浄化処理機能は、基本的には、物理的処理方法です。 
いずれの方法も物理的処理を複合的に採用する工夫があるため、本来はさらに詳細な記述が必要ですが、
物理的作用によるCOD除去能力には残念ながら限界があるため、記載を割愛します。

 

当社は、

施設の維持管理を簡単にするために(複雑化しないために)、

活性汚泥を処理水と分離する装置は沈殿槽だけを目標にすべき、という考え方です。

可能であれば、できる限り、

加圧浮上槽、砂ろ過装置、活性炭ろ過装置 膜などの分離装置や凝集剤などの薬剤を利用することは避けるべきです。

  上記のような前提条件を基に考察すると、

CODを除去するためには、微生物による分解以外に何らかの汚濁除去方法として、新たな機能が必要になります。

新たな機能としては、

廃水に含まれる水溶性(あるいは分散系)合成高分子化合物を

(生物処理の前段として、酵素分解以外の方法で)低分子化する

あるいは逆に、

溶解物質を懸濁物質として析出(あるいは凝析あるいは塩析)させる

上記以外の作用として、

(凝集剤などの薬剤を使用せずに)懸濁物質を吸着・結合・(凝集)沈殿させる

更には、証明ができそうにない事象ですが、

④直接分解する

というような、微生物だけに頼らない、効果が顕著に確認できる何らかの浄化機能です。

いずれかの機能がないと、生物処理法と差別化してCOD除去機能を宣伝することはできないはずです。

 COD除去の際、さまざまな生物処理法の効果が寄与していることも事実ですが、

当社の提案する浄化処理方式には、

上記①②③、さらに、証明が出来そうにない事象として④のような機能があるものと推定しています。

なお、②については、当社が提案する廃水の浄化処理試験を実施して頂くと、

試験後、汚濁物質が析出して試験機の内側に付着している状態が、目視で確認できます。

④については、先述のように、浄化の対象になる合成高分子化合物も天然の汚濁物質と同じく、

その分子構造は、炭素・水素・酸素、次に窒素や主要ミネラルのCa、S、P、Na、K、Cl、Mgなどで構成されるため、

分解が進めば、主な最終生成物は、水と二酸化炭素になります。

  COD値を下げる(=CODを除去する)ためには、難分解性物質含有排水の場合は、

浄化処理施設の容量にも限界があるため、微生物に頼るだけではかなり困難、という説明をさせていただきました。

生物処理法以外でCODを除去する方法は、さまざまな提案がされていますので、別のページで詳しく記載します。

 実際のところ、

COD値がBOD値の数倍も含まれる廃水で、

24時間で浄化処理する場合には、

微生物の寄与率が数%になることもあります。

 

したがって、

COD値に問題がある場合は、必ず、COD除去方式を提案できる事業者に相談する必要があります。

繰り返しになりますが、

微生物による浄化の寄与率が低いのですから、

微生物の状態管理や物理的処理などの生物処理法の管理方法以外に、

COD除去について言及できる事業者、つまり当社のような事業者に相談する必要があります

特に、COD除去の提案をする際に、

COD除去の工程を全く無視して、

BOD除去に関係する係数や試算式だけを使用したり、

生物処理法の考え方だけを基礎としたりして提案するような業者さまは、疑問です。

しかし、微生物が合成高分子化合物の分解にまったく関与していない、ということではありません。

そこで、次に、COD除去に関して、微生物に関係する項目を記載します。

 特定の物質に対して、浄化(分解)効率が非常に高い微生物が発見されています。

資化菌と呼ばれる微生物で、いろいろな物質に対する資化菌が見つけられています。

廃水処理施設内の微生物群は、その廃水分解に最適な微生物群を構成するように変化するという報告も多くあります。

 

 合成高分子化合物(分解困難物質)を製造する事業者からも製品化され販売されるようなことがあります。

しかし、特定の微生物だけを他の微生物よりも優勢的に長期間生存させ続けることは、難しいようです。

製造ラインが複数あれば排出される廃水は一定ではありませんし、季節による排水の水温変化もあるなど、

特定の資化菌だけに最適な環境を維持し続けることが難しい、などの理由があるのかもしれません。

資化菌を採用する場合、定期的に追加して投入する必要が出てくるはずです。

また、合成高分子化合物の分解にかかる時間は、かなり長時間である傾向がありますので、注意が必要です。

水溶性合成高分子化合物で、多量に市中に流通するポリビニルアルコールの場合、

分解の難易度は比較的容易、と評価される文献もありますが、

生物処理法だけに頼った場合、最適条件で完全分解まで1週間程度を要するようです。

文献によって浄化処理の条件が異なりますので、処理に必要な時間は大きく異なる記述を拝見しますが、

資化菌を一定量維持し続けるためには、その廃水に滞留させて増殖させる期間が必要になるようです。

 

したがって、資化菌など、生物処理法だけに頼った浄化処理施設の場合、

凝集処理、加圧浮上処理、ろ過(フィルター・膜)処理、などの装置が採用されることが多いはずです。

 

浄化処理が困難な部類の廃水の場合で、

生物処理法をメインに採用するのであれば、先述のような考え方、

廃水処理施設内の微生物群は、その廃水分解に最適な微生物群を構成するように変化する

を基本として、

わずかながらも汚濁物質を除去(分解)してくれる対象を資化菌に頼るのではなく「微生物群」としてとらえ、

いろいろな微生物の複合的な作用によって汚濁物質が処理されている、と考える方が間違いが少ないと思います。

 

このような考え方を基礎とするためには、

COD除去に問題がある場合は、やはり、微生物だけに頼らない何らかの新しい機能、

つまり、当社が提案する浄化処理方式などが必要になります。

生活排水におけるBODとCODの低減イメージ

 生活排水は、合成洗剤など、一部の難分解性物質が含まれる廃水です。

合成洗剤の界面活性剤などは、合成高分子化合物の分類です。

したがって、浄化槽での浄化処理のイメージは上図のようになります。

図からは、微生物処理だけでも、一定濃度・一定量であれば、CODが低減できることが読み取れます。

しかし、生物処理法は、pH、水温、溶存酸素濃度、有害物質の有無、汚泥濃度、その他多くの環境要件が関係し、

栄養素では、BOD:チッソ:リンの比率が100:5:1というようにバランスが取れている場合に限ります。

したがって、

ミネラルなどの栄養素も含め、さまざまな要件が欠けると、CODどころかBODも除去出来ない事態も考えられます。

 微生物を含め生物が物質を分解する全ての作用は、酵素が触媒として作用することで行っています。

酵素は、細胞内もしくは細胞外で働くことになりますが、先述のように、

合成高分子化合物は大きいため、

直接細胞膜を透過して細胞内部に取り込めないので、

細胞外酵素で高分子化合物の構造の骨格を形成するつなぎ目を切断し、分解の足掛かりとしています。

したがって、高分子に微生物酵素が接触しやすく、高分子の結合の形態が酵素分解されやすいという条件が、

合成高分子化合物の微生物による分解の要件になりそうです。

ただし、

いろいろな文献で、解決策が提案されていますが、生物処理だけでこの要件を解決するのは難しいのが実情です。

 

 微生物として評価するのではなく、(活性)汚泥として、物質の評価をした場合、

懸濁物質を吸着し、凝集沈殿させる機能もあります。

電気的・化学的(錯体形成やキレート結合など)・物理的作用が複合して起こります。

なお、浄化が十分に進行した場合、

浄化処理水に溶解または散在する物質は、最小となり、

活性汚泥の吸着・凝集機能は、ファンデルワース力による結合も最大になり、高くなる傾向があります。

 ここまで、水溶性の合成高分子化合物の浄化処理について記載しましたが、具体的な物質名の記載はしていません。

法令(水質汚濁防止法)上の規制対象となる「有害物質」(元素を含む合成化合物)などを除くと、

新しい合成化合物は、毎年どんどん製品化され、その数や類似品も多いため、

特定の物質について、人の健康や環境への影響など、懸念材料を見つけるのは困難です。

しかし、どんなに分解困難な化学物質やどんなに環境への影響が大きな化学物質が、どんどん新しく作られても、

自然界への予測できないような悪影響を避けるために、

どんな廃水であっても、浄化処理する際、排水規制値まで浄化してから排出しておけば、

水域において、ひいては自然環境において、大きな問題の発生を未然に防ぐことができる、

新しく作られた化学合成物質については、排水規制値のCOD値が一定の目安となる、

というのが、これまでの化学物質管理制度の概要です。

日本の廃水浄化処理規制において、新しく作られる化学合成物質への対応策としては、

法令に基づく制度としては、水質汚濁防止法の「指定物質」がこれに該当します。

さらに、法令に基づく制度の前段階として、答申に基づく制度として、「要監視項目」を設定しています。

逆に言えば、

日本の排水規制制度は

有害物質を除いて、

排出時のCOD値で規制する、あるいは

新しい物質を製品化する条件として、生物などによる分解性能をCOD・TOCなどの指標を使って規制するなどすれば、

環境への悪影響が懸念される新たな合成物質の製造の抑制や環境保全に繋がる、という管理体制が主流です。

したがって、法令による排水規制の対象となる廃水については、

廃水浄化処理の原則として、

廃水は、都市部を除き、出した場所で浄化処理し、処理水を自然界へ戻してあげる

ことが、環境への悪影響を未然に防ぐひとつの対策になります。

しかし、

このような日本の排水規制体制だけでは、身体や健康危害の懸念を払しょくできないため、

国あるいは行政組織が存在する当然の理由として、

「予防原則」という考え方を取り入れた法制度の必要性、立法化の要請が、すでに具体的になっています。

 

後述する「4大公害病」の判決での司法判断は、

汚染物質や有害物質などの排出者側の原因と被害者側の結果については、

相当因果関係をもって挙証責任を認定し、

同じく排出者側の責任については、

身体や健康危害を未然に防止する高度の注意義務を基準として認定し、

汚染物質や有害物質などの排出者側に対して、非常に厳しい判断基準を示しています。

日本で約50年前に示された司法判断(判例)です。

これらの司法判断は、

製造者あるいは販売者に対して、使用者の関係でも成立するため、

製造者と使用者の利害関係では、「製造物責任(PL)法」という法律が既に施行されています。

 

しかし、法令による排水規制の対象とならない廃水については、

上述のようなCOD・TOCなどの指標を使って規制する排水規制制度だけでは対処できません

事例のひとつとして、

後述するネオニコチノイド系農薬などの一部農薬が

法令による使用規制制度が事実上は無い状態(=法令により逆に保護されているような状態)のため、

効果を発揮すべき耕作地以外の水域などでも一定期間その農薬の性質を維持し続け

人以外の生物へ悪影響を及ぼすだけでなく、

人の身体や健康危害に及んでいると推定される現象が挙げられます。

日本以外の一部の先進国では「予防原則」の考え方を法令に取り入れており、

対策として、すでに農薬の使用禁止処分をしている国もありますが、

日本では、農薬による被害が、人の身体や健康危害に及んでいると明確に証明できないことを口実にして、

国民を守るべき国や行政が、法令に基づく農薬の使用を規制(禁止)出来ない状況になっています。

この問題、「農薬取締法」による規制に限っては、既に解決策は明確に存在していますが、国会の不作為があります。

詳しくは、③「農薬取締法」に予防原則を導入する可能性」に記載します。 

 上記のような課題に対処するため、

化学合成物質の製造段階で規制する法令として、

「化審法」(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)、

「薬機法」(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)、

さらに、「食品安全基本法」、「食品衛生法」、

「農薬取締法」などが施行されています。


また、

「化管法」(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)に基づき、

①人の健康や生態系に有害なおそれがある化学物質の移動量(排出や廃棄)を事業者が自ら把握して行政庁に報告し、

 行政庁が公表する制度(=PRTR制度

②指定化学物質等を他の事業者に譲渡・提供する際、取扱いに関する情報の提供を義務付け、

 ラベルによる表示に努めることを求める制度(=SDS:Safety Data Sheet制度)、もあります。

なお、「薬機法」「農薬取締法」に基づき届け出や取り扱いをしている物質の場合、化審法の適用は受けませんが、

工業用途での取り扱いに変更する場合は、化審法の適用を受けることになります。
 

 ※廃水浄化処理で対象になる新しく製品化される合成化合物は、主に、化審法が関連します。

  化審法は、PCBによる環境汚染問題を契機として、昭和48(1973)年に制定され、

  新たに製造・輸入される化学物質について事前に人への有害性などについて審査するとともに、

  環境を経由して健康を損なうおそれがある化学物質の製造、輸入及び使用を規制する仕組みです。

  視点を広げて考えると以下の法律なども関連します。

  さらにもっと視点を広げると、

  経済産業省 国内外の化学物質管理制度の概要(全11ページ)も関連します。

  下に誘導リンクを付けました。

 ※薬機法の対象は、医薬品、医療機器、医薬部外品、化粧品、健康食品などです。

商品ごとに、実際にはどの法規制の対象になるのか。少し難解ですので、「農薬工業会」による一覧を添付しました。

※農薬工業会とは?
農薬工業会は、国内の主要な農薬製造業者を中心として組織された任意団体です。前身は昭和21年に設立された(社)農薬協会で、戦後の農薬の検査・統制の役割を果たし、昭和28年(1953年)に現在の農薬工業会となりました。現在(2023年10月1日)、正会員(農薬製造業者)34社、賛助会員(輸出入業者など)45社で構成され、農薬の取扱高は業界全体の約90%を占めています。(農薬工業会より)

家庭用殺虫剤などの法規制の仕組み

特定の食品に薬品が残留することで発生するリスクは、一定の水域での残留による悪影響と比べると、限定的です。

薬品が残留する過程は、農水産物を原料とする場合、①生育中、②収穫後、③加工中、④加工後などさまざまです。

後述する「農薬取締法」第四条第一項第六号の規定は、「食品衛生法」による食品の薬品残留基準と同じ基準です。

食品の薬品残留基準について
食品中に残留する全ての農薬、飼料添加物、動物用医薬品などについては、残留基準が、設定だけはされています。残留基準は、食品安全委員会が人が摂取しても安全と評価した量の範囲で、食品ごとに基準値が異なります。基準値を超えて残留する食品の販売、輸入などは、「食品衛生法」により、禁止(=「ポジティブリスト制度」)されています。

※指標について
無毒性量( NOAEL:No Observed Adverse Effect Level)
動物を使った毒性試験において何ら有害作用が認められなかった用量レベル
各種動物(マウス、ラット、ウサギ、イヌ等)のさまざまな毒性試験において、それぞれNOAELが求められ、全ての毒性試験の中で最も小さい値をADI設定のためのNOAELとする(妊娠中の胎児への影響などについても試験を実施)
ADI:Acceptable Daily Intake:許容一日摂取量
農薬を食品等から毎日摂取してもADIを超過しなければ健康への悪影響は考えられない、としています。ARfD:Acute Reference Dose:急性参照用量
人が農薬を短時間(24時間以内)に摂取しても、健康への悪影響がないと推定される摂取量(mg/kg体重)の上限、としています。

ADI、ARfDともに、複数の動物実験の最小数値から、
さらに安全を見込んで1/100(人と動物の種間差として10倍、人の間の個人差として10倍)を設定。
食品の薬品残留基準
食品の薬品残留基準設定の概略

コーデックス委員会【FAO(国際連合食糧農業機関)及びWHO(世界保健機関)により設置されている政府間機関】が定める国際基準があるものについては、国際基準も参照します。

 化学物質管理制度とは違って、

排水規制制度における化学物質への対応策として、水質汚濁防止法で規制されている制度です。

「指定物質」とは、有害物質や各種の油(原油、重油、潤滑油、軽油、灯油、揮発油、動植物油)以外で、

「公共用水域に多量に排出されることにより人の健康若しくは生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質」です。

ただし、指定物質の排水規制は、水質汚濁防止法において、有害物質には含めないため、

有害物質が放流水に含まれる場合には、その有害物質の濃度で排水基準が規定され、排水規制されるのに対して、

指定物質を浄化処理後に河川放流する際には、処理水に含まれるその指定物質の濃度を規制するのではなく、

環境保全項目で、1日の平均排水量が50立米以上の場合に、全国一律の基準で、単に濃度規制している状況です。
 

ただし、水質汚濁防止法において、指定物質は、有害物質と同じく、事故時の措置について強制しています。

施設の破損その他の事故が発生し、

指定物質を含む水が当該指定事業場から公共用水域に排出され、又は地下に浸透したときは、

直ちに、引き続く指定物質を含む水の排出又は浸透の防止のための応急の措置を講ずるとともに、

速やかにその事故の状況及び講じた措置の概要を都道府県知事に届け出なければならない。

「水質汚濁防止法」
(事故時の措置)
第十四条の二
2 指定施設を設置する工場又は事業場(以下この条において「指定事業場」という。)の設置者は、当該指定事業場において、指定施設の破損その他の事故が発生し、有害物質又は指定物質を含む水が当該指定事業場から公共用水域に排出され、又は地下に浸透したことにより人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるときは、直ちに、引き続く有害物質又は指定物質を含む水の排出又は浸透の防止のための応急の措置を講ずるとともに、速やかにその事故の状況及び講じた措置の概要を都道府県知事に届け出なければならない

※有害物質(人の健康の保護に係る項目)は28種類、水質汚濁防止法第2条第2項第1号に規定

※環境保全項目(生活環境の保全に係る項目)は、15種類、水質汚濁防止法第2条第2項第2号に規定

※指定物質は、60種類、水質汚濁防止法第2条第4項に規定
 過去には、指定物質であった物質を有害物質に変更した事例があります
 また、「維持されることが望ましい河川、湖沼、海域の基準(年間平均値)」には、指定物質の
 ノニルフェノールと直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩が、測定項目に含まれています
 なお、ノニルフェノール、4-t-オクチルフェノール及び2,4-ジクロロフェノールは、
 「フェノール類及びその塩類」に含まれます。

 指定物質が決定する過程は、

中央環境審議会の答申(=諮問に対して意見を述べること)によって、

人の健康の保護や生活環境の保全等の観点から環境基準や要監視項目等に設定された物質が指定対象とされ、

中央環境審議会およびその部会などで審議され、指定物質に指定されています。

事例として、2012年(平成24年)5月中旬、「利根川水系における取水障害に係る水質事故」が発生し、

2012年(平成24年)12月、水質汚濁防止法の指定物質にヘキサメチレンテトラミンが追加されました。

最近では、2023(令和5)年2月1日に以下の4つの物質が追加され、施行となりました。

①アニリン、②ペルフルオロオクタン酸(別名PFOA)及びその塩、③ペルフルオロ(オクタン―一―スルホン酸)(別名PFOS)及びその塩、④直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩

 環境基本法は、すべての環境に関する法令の最上位に位置する、環境に関する基本的政策を規定する法律です。

以下の環境基本法の各条文から、

広範な環境の保全に関する審議が、中央環境審議会に諮問され、

その答申に基づいて、さまざまな施策が実施される、ということが分かります。

「環境基本法」
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。

(国の責務)
第六条 国は、前三条に定める環境の保全についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(地方公共団体の責務)
第七条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、環境の保全に関し、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

第二章 環境の保全に関する基本的施策
第一節 施策の策定等に係る指針
第十四条 この章に定める環境の保全に関する施策の策定及び実施は、基本理念にのっとり、次に掲げる事項の確保を旨として、各種の施策相互の有機的な連携を図りつつ総合的かつ計画的に行わなければならない。

一 人の健康が保護され、及び生活環境が保全され、並びに自然環境が適正に保全されるよう、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること。

二 生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られるとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全されること。

三 人と自然との豊かな触れ合いが保たれること。

第二節 環境基本計画
第十五条 政府は、環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。

2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

一 環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱

二 前号に掲げるもののほか、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 環境大臣は、中央環境審議会の意見を聴いて、環境基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

4 環境大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、環境基本計画を公表しなければならない。

5 前二項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。

第三節 環境基準
第十六条 政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。

2 前項の基準が、二以上の類型を設け、かつ、それぞれの類型を当てはめる地域又は水域を指定すべきものとして定められる場合には、その地域又は水域の指定に関する事務は、次の各号に掲げる地域又は水域の区分に応じ、当該各号に定める者が行うものとする。

一 二以上の都道府県の区域にわたる地域又は水域であって政令で定めるもの 政府

二 前号に掲げる地域又は水域以外の地域又は水域 次のイ又はロに掲げる地域又は水域の区分に応じ、当該イ又はロに定める者

イ 騒音に係る基準(航空機の騒音に係る基準及び新幹線鉄道の列車の騒音に係る基準を除く。)の類型を当てはめる地域であって市に属するもの その地域が属する市の長

ロ イに掲げる地域以外の地域又は水域 その地域又は水域が属する都道府県の知事

3 第一項の基準については、常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。

4 政府は、この章に定める施策であって公害の防止に関係するもの(以下「公害の防止に関する施策」という。)を総合的かつ有効適切に講ずることにより、第一項の基準が確保されるように努めなければならない。

(中央環境審議会)
第四十一条 環境省に、中央環境審議会を置く。

2 中央環境審議会は、次に掲げる事務をつかさどる

一 環境基本計画に関し、第十五条第三項に規定する事項を処理すること。

二 環境大臣又は関係大臣の諮問に応じ、環境の保全に関する重要事項を調査審議すること。

三 自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(昭和四十五年法律第百三十九号)、自然環境保全法(昭和四十七年法律第八十五号)、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)、瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和四十八年法律第百十号)、公害健康被害の補償等に関する法律(昭和四十八年法律第百十一号)、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成四年法律第七十五号)、ダイオキシン類対策特別措置法(平成十一年法律第百五号)、循環型社会形成推進基本法(平成十二年法律第百十号)、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成十二年法律第百十六号)、使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成十四年法律第八十七号)、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号)、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成十六年法律第七十八号)、石綿による健康被害の救済に関する法律(平成十八年法律第四号)、生物多様性基本法(平成二十年法律第五十八号)、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成二十年法律第八十三号)、水銀による環境の汚染の防止に関する法律(平成二十七年法律第四十二号)及び気候変動適応法(平成三十年法律第五十号)によりその権限に属させられた事項を処理すること。

3 中央環境審議会は、前項に規定する事項に関し、環境大臣又は関係大臣に意見を述べることができる。

4 前二項に定めるもののほか、中央環境審議会の組織、所掌事務及び委員その他の職員その他中央環境審議会に関し必要な事項については、政令で定める。

 後段の「予防原則」の項目で詳しく記載します。

排水規制制度における化学物質への対応策として、環境への影響が懸念される物質について、

法令の枠外で、

環境基本法に基づいて実施されている「中央環境審議会」の答申に基づいて、「要監視項目」を設けています。

 「水環境保全のための廃水浄化とは?」というページは、

日本の廃水浄化の全体像を推察していただくことを目的に記載しています。

このページの中で、

政府の廃水浄化制度についての考え方や方針、②将来の日本の水環境の汚濁状況が、確認・予測できます。

 

特に、COD値で表されるような汚濁物質

難分解性の傾向があることや、そもそも廃水浄化の規制が不十分な後進国が多いことなどから、

汚濁物質によっては、地球規模では、少しづつ蓄積している可能性を考える必要もあります。

また、先述の通り、一部の農薬などは、水域などでも一定期間その農薬の性質を維持し続け、

人以外の生物へ悪影響を及ぼすだけでなく、人の身体や健康危害に及んでいると推定されています。

 合成化合物質(化学物質)が、河川や外気など環境中に排出された後、

大気や飲食品などを経由して広く健康に悪影響を及ぼしたり、水域のさまざまな生物に影響を及ぼすなど、

人や生態系に影響を与える程度を「環境リスク」と言います。

天然物質・化学物質の分け隔ての必要はありませんが、

人工的に作られるあらゆる物質は、便利さの反面、何らかの有害な影響があると考えることが重要です。

天然物質でも、地球環境を常時循環している物質もあります。

有害性のことを「ハザード」と言います。

人工物を化学物質に限っても、急性、慢性、生殖異常や後世代に及ぼす影響、アレルギー反応など、さまざまです。

環境リスクの評価方法の基本的な考え方

リスクが、有害性の強弱の程度と、有害性の量(化学物質の場合は暴露量)によって決まる、ということです。

有害な影響は、調査しておく必要がありますが、

さまざまな生態系によって影響の程度が異なること、

有害性ですので、高等生物への影響調査は基本的に試験が困難、もしくは人の場合は出来ないことなどから、

試験方法に検討余地はあるものの、

経済協力開発機構( OECD)や「化審法」に定められたガイドラインに基づいて、

藻類、ミジンコ、ヒメダカ、セスジユスリカ(底生成物)を被験生物として、リスク評価試験が実施されています。

※リスクアセスメントとは?
アセスメント(assessment)の意味は、評価や査定です。リスクアセスメントは、さまざまな場面において、存在しうる危険性の洗い出し、とその要因を洗い出して把握し、それらの危険性の程度(=レベル)を区分し、その危険性の要因をリスクレベルに基づいて低減し、除去するために必要な事項を洗い出し、リスクを低減させるための客観的な評価方法・査定方法です。

ところで、

リスクは、日本語では「危険性」ですので、上記のが有ったとしても悪影響が出る、とは限りません。

実際に摂取するなどしても、

①と②が少なければ、危険性があるというだけで、悪い影響が必ずしも出るとは限りません。

また、摂取した個体差によっても、悪影響には差が出る可能性があります。

結局、悪影響が出た場合、その結果と原因の因果関係を証明することは、

過去の歴史を振り返っても、極めて困難という結論になります。

よくよく考えてみると、①と②は、巷にあふれているものでもあります。


 なお、環境リスクという考え方は

労働・生活・自然などの各種の環境、あるいは、災害、飲食物、医療行為、製造物など、

化学物質に限らず、何らかの行為全般について、いろいろな場面で当てはめることが出来る考え方です。

 したがって、

後述する「内分泌かく乱物質」あるいは、さまざまな薬剤による後遺症や環境への影響などの問題は、

上記のような考え方だけでは解決できません。

過去の研究・調査から推定される悪い影響を何らかの数値で表すことすら難しく、

特定の有害な原因物質と悪い影響との因果関係を証明することは困難を極めます。

同一種の生物であっても、生体の個体差を考慮すると、有害性の有無は、もっと不透明になりそうです。

そういうことから、

環境リスクという考え方で評価・査定しても、

人の健康への悪影響などを防止することは、できそうにありません。

そこで、

後述する「予防原則」という考え方、あるいは仕組み、法制度が必要になります。
 

予防原則とは、国家による強制力が働く仕組み(例えば、国家が強制的に何かを禁止する行為など)ですので、

予防原則を適用する場合は、適用要件を厳しくして、

予想される関係者相互の利益関係に矛盾が生じない規定にする必要があります。

この部分が満たされれば、

人に対する身体や健康危害を防止することができます。

大切なことは、

有害と推定される物質を製造する前であれば、製造段階での損害だけで、損害は研究開発費のレベルで収まりますが、

製造・販売・広く流通して、広範囲に悪い影響が出てしまってからでは、

損害や健康危害など、悪影響が広範囲過ぎて収拾がつかない事態が、

後述する四大公害病などの歴史を振り返れば、容易に予想できる、ということです。

しかも、

後述する4大公害病の判例、あるいは法制度の整備されている方向性からも、

既に、予防原則を取り入れた法制度の整備環境(立法化の要件)が整っている状況です。

したがって、

現状立法府の不作為が指摘できる状態(=国会議員の皆さんが仕事をしていない)、

ということになります。

なお、詳細は、次項以降に記載するさまざまな課題を総合して、深く勘案していただければ、

結論として、

「予防原則」を取り入れた法制度の立法化が必要である、ということにたどり着くはずです。

※アメリカ合衆国では、除草剤に関して、収拾がつかないような高額な賠償命令判決が出ています。
後述する除草剤は、対象とする植物に対する影響だけでなく、
対象植物に関わる微生物や昆虫などの生物を介して、
それら生物を捕食する生物に影響が連鎖し、
最終的には、食物連鎖の頂点にいる人に対し、身体や健康危害を及ぼす、というものです。
同じく後述するネオニコチノイド系農薬なども、
同じような食物連鎖による人への身体や健康危害が、指摘されています。
 

 リスクコミュニケーションの定義は、さまざまです。

定義の一例では、

「リスク分析の全過程において、

リスク評価者、リスク管理者、消費者、事業者、研究者、その他(国民を含む)全ての関係者の間で

情報および意見を相互に交換することです。

リスク評価の結果およびリスク管理の決定事項の説明を含みます。」

というような内容です。

「リスクを分析することによって、

リスク評価、リスク管理およびリスクコミュニケーションの三つの要素が相互に作用し合うことによって、

リスク分析はよりよい結果が得られます。」

となります。

※リスクコミュニケーションには、意見交換会や意見公募手続き(旧パブリックコメント手続き)などが含まれます。

※意見公募手続きは、行政機関が命令等(政令、省令など)を制定するに当たって、事前に命令等の案を示し、その案について広く国民から意見や情報を募集するものです。これは平成17年6月の「行政手続法」の改正により新設され、平成11年から閣議決定で実施されていたパブリックコメントに替えてできた制度です。関連条文は、「行政手続法」38条~45条あたりです。

 なお、リスク分析は、作業現場などでは重要で、当然に必要性があります

関係する法律は、労働安全衛生法などです。

※「労働安全衛生法」
(事業者の行うべき調査等)
第二十八条の二 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等(第五十七条第一項の政令で定める物及び第五十七条の二第一項に規定する通知対象物による危険性又は有害性等を除く。)を調査し、その結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない
 

ただし、リスク分析だけでは、将来発生するであろうリスクを含め、さまざまな問題の根本的な解決はできません

神のようなものでは無い人がすることですので、四大公害病に類似の社会問題を再発する可能性は残されています。

国や関係機関(内閣府、消費者庁、国民生活センター、厚生労働省、農林水産省)などが、

さまざまな意見交換会や意見募集などを継続実施していますが、決して問題解決には至りません

具体例として、

水域で、環境に悪影響を与える可能性がある有害物質として、

ある特定の化学合成物質の濃度について規制する法律として、後述する「農薬取締法」があります。

条文では、取り返しのつかないような重大な環境への悪影響を与える恐れがある基準値(=濃度)に達した場合、

農薬としての登録を拒否できるという規制です。

したがって、

国の段階では、予防原則を取り入れた法制度の確立(=法律と条文の作成)が必要です。

国の段階でも、国民に対して、あるいは事業者に対して、リスク分析の必要性を訴える場面が多くみられますが、

行政府(=国)もしくは立法府(=国会議員)が、本来すべき対応は、

予防原則を取り入れた法制度の整備です。

予防原則を取り入れた法制度の必要性が確定、かつ法律の整備要件が整ってから、既に数十年経過している状況です。

なぜこのような評価にいたるのか、過去のさまざまな歴史や実例を総合すると、ご理解いただけるものと思います。

 環境省は、後述する「農薬取締法」第四条第1項第6号から第9号について所管しています。

環境省のリスクマネジメントについて、一例を、以下の誘導リンクに貼り付けました。

環境省のリスクマネジメントの評価基準は、これを採用しているのであれば、時代錯誤のように考えられます。

疑問点の例は、「成長」や「成果」など、人によってリスクの評価が異なることを当然の前提条件にしている点です。

後述しますが、「公害対策基本法」が廃止され、「環境基本法」に移行した法令の趣旨と合致するのか、疑問です。

環境関連は、環境省の所管する業務ですし、「基本法」は、それに関連する全ての法令の上位に位置する法律です。


リスク分析を評価する際の基準は、

さまざまな政策の方向性や方針を決定する際の判断基準になりますので、

時代背景にマッチした内容になっているか、歴史に学んだ内容になっているか、極めて重要なテーマです。
 

何かを評価する際の基準は、

定性的ではなく定量的になっているかどうか、も重要ですが、

評価をする目的や考え方に疑義があると、

その評価基準の結果は、まったく違ったゴールに向かって進むことになります。
 

他の実例として、

公共下水道事業など、地方公共団体の行政運営(事務処理)の評価方法の疑問について取り上げています。

 たくさんの実例の中から、3つ例示します。

それぞれの課題は、奥深いものがあります。

項目別に誘導リンクを設定しましたので、各種資料をご自身で検索し、考察していただければ幸いです。

なお、当社の判断基準について、基礎的考え方は、別のページ(「COD削減の必要性」など)に記載しました。

 2012年(平成24年)5月中旬、

利根川水系の浄水場で高濃度のホルムアルデヒドが相次いで検出され、

埼玉企業局、東京都水道局、茨城県企業局、群馬県企業局の浄水場において取水停止。

5月24日、厚生労働省の研究機関によって、主な原因物質がヘキサメチレンテトラミンであることが推定

水質測定地点と浄水場

当時の制度に基づく対応について、違反は見当たらない事案でしたので、刑事事件としての裁判ではなく、

損害賠償請求訴訟が、東京都、茨城県、群馬県と共同で平成25年8月にさいたま地方裁判所に提訴され、

平成30年12月26日和解が成立。

(背景は、「環境省 利根川水系における取水障害に係る水質事故原因究明調査について」を参照ください。)

粉末活性炭費用、水質検査費用、人件費等の和解金が支払われることで解決することになりました。

この事件後、2012年(平成24年)12月、水質汚濁防止法の指定物質にヘキサメチレンテトラミンが追加されました。

指定物質とは
水質汚濁防止法第2条第4項に規定されており、「公共用水域に多量に排出されることにより人の健康若しくは生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質」のことです。2023(令和5)年2月時点で、60の物質が指定されています。水質汚濁防止法第14条の2の規定に該当する物質です。

※事故時の責任について
「水質汚濁防止法」
(事故時の措置)
第十四条の二 特定事業場の設置者は、当該特定事業場において、特定施設の破損その他の事故が発生し、有害物質を含む水若しくはその汚染状態が第二条第二項第二号に規定する項目について排水基準に適合しないおそれがある水が当該特定事業場から公共用水域に排出され、又は有害物質を含む水が当該特定事業場から地下に浸透したことにより人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるときは、直ちに、引き続く有害物質を含む水若しくは当該排水基準に適合しないおそれがある水の排出又は有害物質を含む水の浸透の防止のための応急の措置を講ずるとともに、速やかにその事故の状況及び講じた措置の概要を都道府県知事に届け出なければならない

2 指定施設を設置する工場又は事業場(以下この条において「指定事業場」という。)の設置者は、当該指定事業場において、指定施設の破損その他の事故が発生し、有害物質又は指定物質を含む水が当該指定事業場から公共用水域に排出され、又は地下に浸透したことにより人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるときは、直ちに、引き続く有害物質又は指定物質を含む水の排出又は浸透の防止のための応急の措置を講ずるとともに、速やかにその事故の状況及び講じた措置の概要を都道府県知事に届け出なければならない。

3 貯油施設等を設置する工場又は事業場(以下この条において「貯油事業場等」という。)の設置者は、当該貯油事業場等において、貯油施設等の破損その他の事故が発生し、油を含む水が当該貯油事業場等から公共用水域に排出され、又は地下に浸透したことにより生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるときは、直ちに、引き続く油を含む水の排出又は浸透の防止のための応急の措置を講ずるとともに、速やかにその事故の状況及び講じた措置の概要を都道府県知事に届け出なければならない。

4 都道府県知事は、特定事業場の設置者、指定事業場の設置者又は貯油事業場等の設置者が前三項の応急の措置を講じていないと認めるときは、これらの者に対し、これらの規定に定める応急の措置を講ずべきことを命ずることができる。

(事業者の責務)
第十四条の四 事業者は、この章に規定する排出水の排出の規制等に関する措置のほか、その事業活動に伴う汚水又は廃液の公共用水域への排出又は地下への浸透の状況を把握するとともに、当該汚水又は廃液による公共用水域又は地下水の水質の汚濁の防止のために必要な措置を講ずるようにしなければならない。

第四章 損害賠償
無過失責任
第十九条 工場又は事業場における事業活動に伴う有害物質の汚水又は廃液に含まれた状態での排出又は地下への浸透により、人の生命又は身体を害したときは、当該排出又は地下への浸透に係る事業者は、これによつて生じた損害を賠償する責めに任ずる

2 一の物質が新たに有害物質となつた場合には、前項の規定は、その物質が有害物質となつた日以後の当該物質の汚水又は廃液に含まれた状態での排出又は地下への浸透による損害について適用する。

第二十条 前条第一項に規定する損害が二以上の事業者の有害物質の汚水又は廃液に含まれた状態での排出又は地下への浸透により生じ、当該損害賠償の責任について民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百十九条第一項の規定の適用がある場合において、当該損害の発生に関しその原因となつた程度が著しく小さいと認められる事業者があるときは、裁判所は、その者の損害賠償の額を定めるについて、その事情をしんしやくすることができる。

(賠償についてのしんしやく)
第二十条の二 第十九条第一項に規定する損害の発生に関して、天災その他の不可抗力が競合したときは、裁判所は、損害賠償の責任及び額を定めるについて、これをしんしやくすることができる。

「ホルムアルデヒド検出に係る損害賠償請求訴訟
の和解について - 埼玉県」より

「環境省 ヘキサメチレンテトラミンの概要」より抜粋

CAS 登録番号 (CAS Registry Number®: CAS RN®) は,世界的に利用されている,個々の化学物質に固有の識別番号です.CAS RN® 自体には化学的な意味はありませんが,一つの物質あるいは分子構造に様々な体系名,一般名,商品名,慣用名などが存在する場合にも間違いなく同定できる手段で、化審法でも検索の番号として採用されています

 除草剤に含まれる有効成分の内、グリホサートと略称される成分には、

グリホサートイソプロピルアミン塩、グリホサートアンモニウム塩、グリホサートトリメシウム塩などがあります。

有効成分にグリホサートを使用した除草剤で有名なのが、ラウンドアップです。

ラウンドアップは、アメリカのモンサント社が開発し、モンサント社をドイツのバイエルが買収しています。

日本での販売権は、日産化学株式会社が保有しています。

グリホサートは

分子量(200前後)で判断すると、高分子ではなく低分子の部類に入りますが、

C、H、O、以外にPやNを含みます。

IARC (=WHOのガン特化機関)は、2015 年、「ヒトに対しておそらく発がん性がある」=Group 2Aとしています。

また、一般に流通する薬剤の商品(=「製剤」)は、「有効成分」以外に補助成分を添加して構成されており、

製剤と有効成分の毒性比較では、有効成分だけよりも製剤の方が毒性が高くなる例が多いという指摘があります。

※2016年7月11日
ノルウェー食品安全庁(NFSA)、欧州連合(EU)が、
ポリエトキシ化牛脂アミン(POEA)のグリホサート製剤への使用禁止を決定

欧州委員会(EC)の植物・動物・食品及び飼料に関する常任委員会は7月11日に、POEAのグリホサート製剤への使用を禁止すると決定した。

 同委員会は、EU加盟国がグリホサートの公共の場所での使用及び収穫前散布での使用に関して規制措置を設けるのを認めることにも合意した。ノルウェー及びEU間では、欧州経済領域(EEA)に基づく合意があることから、EUにおける農薬に関する規則はノルウェーにおける農薬に関する規則に内包される。

NFSAはEUの決定に従う。
POEAを含む植物保護製剤の販売が認められるのは2016年まで、使用は2017年までとなる。

 ノルウェーでは、大麦の収穫前散布にグリホサートの使用が承認されており、例外的にえん麦にも認められている。また、子供の遊び場では、グリホサートを含む全ての農薬の使用が禁じられている。

2023年11月16日
欧州委員会は、欧州食品安全機関(EFSA)と欧州化学品庁(ECHA)がEU加盟国とともに実施した包括的な安全性評価に基づき、今後10年間のグリホサートの承認更新を決定

 注意しなければならないのは、薬剤について、環境への悪影響や人の身体や健康危害について考察する場合、

薬剤散布による対象物(耕作物)への

①直接的影響は当然ですが、

循環する自然環境の中で、

②連鎖的な影響についても検証する必要があるということです。

なお、薬剤散布後、

薬害物質が生分解や紫外線などによって、

散布地に影響しなくなるまでの期間は、

土壌の状態、季節、日照条件などによって変わります。

また、作物によっては、薬剤の残留状況は異なり、残留基準値も異なります。

除草剤については、水生植物、特に沈水性植物の消滅もしくは減少に相当因果関係を指摘する文献があります。

 殺虫剤は、有機塩素系(DDTなど)や有機リン系がありましたが、これらに変わるものとして、

世界的に、分子量が大きくなく(数百程度)生分解性が比較的早いとされ、

浸透性のネオニコチノイド系など、新しいタイプの殺虫剤が流通しています。

ネオニコチノイド系農薬は、耕作物に浸透させ、その作物を食害する標的害虫に作用して効果を発揮する農薬です。

農薬によるさまざまな影響は別にして、

流通量が急増しており、全国の河川で、多くの残留農薬調査の文献が発表されています。

実態は、水田や屋外耕作地に散布されると、極低濃度の成分は河川などで検出されるのが一般的になっています。

また、シロアリ駆除剤としてもネオニコチノイド系農薬は使用されており、

床下から拡散し、低濃度ながら室内を汚染することが判明しています。 

DDTは、現在でも制限して使用されている外国の地域がありますので、詳しくは下記の誘導リンクをご覧ください。

農薬について
殺虫、殺菌、除草、殺鼠、植物成長調節、フェロモン(誘引)、展着(薬液の付着性や浸達性を高めたり効果を一層安定させる)、防腐、消毒、抗菌、忌避(きひ)、交信かく乱(人工的に合成した性フェロモンを充満させメスにたどり着けないようにして交尾させない)など、さまざまな目的で使用されます。
「農薬取締法」に基づき登録された農薬の数は約2万1千あり、このうち1万6千が失効しています。

ネオニコチノイド系殺虫剤とは?
1993(平成5)年頃から使用され始めた農薬で、以下の7つの合成化合物の登録があります。
なお、他の浸透性農薬、あるいは類似作用の農薬として⑧スルホキサフロル、⑨トリフルメゾビリム、⑩フルピリミンもネオニコチノイド系殺虫剤と同様に標的害虫の神経伝達を阻害する作用があります。
この種の農薬の問題は、効果を発揮すべき耕作地以外の水域などでも一定期間その性質を維持し続けていることです。極微量でも、耕作地以外で、標的害虫以外の人を含む生物への悪影響が指摘されています。

※ネオニコチノイドの昆虫選択的毒性発現の分子メカニズム:近畿大学農学部応用生命化学科 松田一彦
「ネオニコチノイドが標的とするニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)は5つのタンパク質が梅花のように集合した構造を持ち、神経伝達物質アセチルコリンを受容するとカチオンを選択的に通す自身のチャネルを開くことで、神経細胞の興奮を誘起する。天然物ニコチンがヒトのnAChRと昆虫のnAChRのどちらも活性化しイオンチャネルを開く活性(アゴニスト活性)を示すのとは対照的に、ネオニコチノイドは昆虫のnAChRを選択的に活性化する。つまりネオニコチノイドは何らかの理由で昆虫のnAChRの中のアセチルコリン結合部位に強く結合し、活性を発揮するのである。これは、昆虫のnAChRがネオニコチノイドとの相互作用に有利に作用する構造を有するためである。演者はその構造の解明に取り組んだ結果、昆虫のnAChRはネオニコチノイドに特有のマイナスの電荷を帯びた構造との相互作用に有利にはたらくプラスの電荷を帯びた構造をもち、哺乳動物のnAChRにはこうした構造がなく、むしろネオニコチノイドを遠ざけるマイナスの電荷を帯びた構造を有することを突き止めた。本講演では、このような成果のみならず、ネオニコチノイドはどれもが同じようにnAChRと相互作用しないことをも紹介する。」

※ネオニコチノイド系農薬の水域での検出について
田や耕作地で使用された場合、後述する水域PEC【=水域の生活環境動植物の被害防止に係る農薬登録基準≒旧名称:水産PEC=水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準(平成30年12月1日以前)、水産動植物の被害防止に係る農薬登録基準(令和2年4月1日以前) 基準値設定済み農薬:458農薬 令和5年10月12日時点】および濃度としての基準値が水域PECよりも高く設定される水濁PEC(水質汚濁に係る環境中予測濃度)の基準値に関わらず、基本的に農薬の有効成分が周辺水域で検出される状況です。

※PEC=(河川などの水の)環境中予測濃度(Predicted Environmental Concentration)
水田使用農薬の水質濃度の推定方法は3段階とし、第1段階は数値計算(=投与した農薬が一定割合で溶解するという試算)による算定、第2段階は水質汚濁性試験等のデータ(=模擬水田での生分解・土壌吸着などを含めた試験結果)を用いることとし、第3段階では実際に水田圃場での試験データを用います。

非水田使用農薬に関しては2段階とし、第1段階は数値計算による算定、第2段階では地表流出試験等のデータを用います。これらの段階制試験は、より高次の段階の試験を要しない(=各段階でAECと比較し、AECを下回る場合は次の段階の予測をしない)ためのスクリーニング試験です。

※「水質汚濁に係る農薬登録基準」とは、
「農薬取締法第4条第1項第6号から第9号までに掲げる場合に該当するかどうかの基準(昭和四十六年三月二日農林省告示第三百四十六号)」(最終改正 令和二年五月二十九日 環境省告示第五十四号)の第4号イ、ロ、ハ、ニに該当する場合を指しています。
この告示によると、「水質汚濁に係る農薬登録基準」=「農薬取締法」第4条第1項第9号、です。
環境省は、『農薬を使用した場合に、当該農薬が公共水域に流出又は飛散することによって、「水質汚濁に係る農薬登録基準」に該当する場合は、登録できません。』としています。
水質汚濁に係る農薬登録基準=旧名称:水質汚濁に係る農薬登録保留基準(平成30年11月まで)】は、環境省によると、水質汚濁に係る環境基準全ての公共用水域で維持することが望ましい基準(=全国一律の基準)と同等の基準として設定されています。水質汚濁に係る農薬登録基準は、令和5年10月12日時点で、基準値設定済み農薬:359農薬です。

※AEC 急性影響濃度(Acutre Effect Concentration)
水産生物が、ある化学物質によって短期間の暴露で影響を受けると評価される最小濃度のこと。
魚類(メダカ又はコイ)は96時間後の急性半数致死濃度、ミジンコ(オオミジンコ)は48時間後の急性遊泳阻害濃度、 藻類(緑藻Pseudokirchneriella subcapitata)は72時間後半数生長阻害濃度、の急性毒性試験結果による LC50(半数致死濃度)もしくは EC50(半数影響濃度)をそれぞれの不確実性係数魚類と甲殻類は 10、藻類は 1)で除したものの最小値を採用します。

※排水全般についての規制制度の詳細は、
「水の浄化とは?」というページの「排水規制」の項目の一部として記載します。
概略は、「自然界の水と排出水の基準」一覧(クリックすると拡大します)が理解しやすいと思います。

ネオニコチノイド系殺虫剤、他の浸透性農薬、あるいは類似作用の農薬は、おおよそ以下の通りです。

①ジノテフラン

②クロチアニジン

③イミダクロプリド

④チアメトキサム

⑤アセタミプリド

⑧スルホキサフロル

⑨トリフルメゾビリム

⑥チアクロプリド

⑦ニテンピラム

⑩フルピリミン

①ジノテフラン
②クロチアニジン
③イミダクロプリド
④チアメトキサム
⑤アセタミプリド

 ネオニコチノイド系殺虫剤の検討事項例(①~⑦)・消費者ができる対策(⑧)について

①便利なため、世界中で使用されるようになり、耕作地での使用量は今なお増加傾向であること。

②耕作物に浸透させ、食べた害虫に作用し駆除する目的のため、耕作物を洗浄して使用しても排除できないこと。

③田や耕作地で使用された場合、水産PECおよび水濁PECの基準値に関わらず、基本的に周辺水域で検出されること。

④害虫は神経の異常で駆除されますが、無毒性量でも哺乳類の脳神経に異常を与えるという研究結果もあります。

⑤殺虫剤の有効成分は、神経細胞で作用すると容易に代謝される物質であるはずが、効果が一定期間継続します。

⑥妊婦が摂取した場合、胎盤・臍帯(さいたい=へその緒)をほぼ100%透過する、と報告されています。

⑦水域での薬剤による悪影響の原因が、耕作地での使用(量・回数など)の過多に起因する可能性が排除できません。

⑧耕作物の生育方法を規制する「有機農業」で生産された耕作物は、ネオニコチノイド系農薬を使用できません。

ネオニコチノイド系殺虫剤の使用を制限した事例として、トキの繁殖地でもある新潟県佐渡市の佐渡島があります。

自然環境に配慮した農業生産をしていることで有名です。

制限してから、佐渡島での生態系は、顕著に変わったと報告されています。

現地調査の事例として、埼玉県環境部 環境科学国際センターの調査があり、リンク付けしました。

2014(平成26)年10月時点の記事です。

ネオニコチノイド系殺虫剤について、下記問いに対する国(農林水産省)の見解を誘導リンクに貼り付けました。

Q5.  EUにおいて、ネオニコチノイド系農薬の使用が制限されることとなったとのことですが、その内容はどのようなものですか。

Q6.  米国において、ネオニコチノイド系農薬の使用が制限されることとなったとのことですが、その内容はどのようなものですか。

Q7.  これらのネオニコチノイド系農薬は、日本でどのように使われているのですか。

Q8.  日本でもEUと同様にネオニコチノイド系農薬の使用を制限しなくてもいいのですか。

 過去に問題となった有害な物質でも、

当初は有益性のみ着目され、有害性はあまり疑問視されませんでした。

現在では、

過去の歴史から、

製造もしくは加工の段階で、有害物質を使用しているかどうかは明らかに分かる、もしくはある程度は推定できます。

先述のような化学物質管理制度などによって、化学物質の特性が、長年にわたって明らかにされてきたからです。

なお、法令上の有害物質、およびその排水規制については、別のページに記載しました。

ところで、

廃水浄化処理の現場では、特定の有害な物質を含有する排水とCOD値の関係性を考慮することはありません。

例えば、

特定の有害と認識される物質を含んだ廃水を浄化して放流した場合、

放流水の水質測定は、その特定物質ではなく、排水規制に規定されたCOD値などを測定することになります。

したがって、

将来問題になる可能性のある有害性が疑われる対象物質となるのは、

過去に製造され広く流通している製品を含め、新たに製造される物質が中心になります。

中心というのは、既に製造され、一般に流通しているような物質をも含むからです。

例えば、対象物質が、製造段階、あるいは自然界に放出されてからを問わず、

他の物質などとの化学反応による副生成物として、意図せず生成される場合、

あるいは、

生体内に入ってから、代謝生成物質として生成され、

意図しない影響を、最初にその物質を捕食した者を含め、生態系に与える場合など、

さまざまな、ありとあらゆるケースが考えられるからです。

 

 環境省の「化学物質審査規制法ホームページ」には、次のような記載があります。

我が国では、PCBによる環境汚染問題を契機として、昭和48(1973)年に「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」が制定され、新たに製造・輸入される化学物質について事前に人への有害性などについて審査するとともに、環境を経由して人の健康を損なうおそれがある化学物質の製造、輸入及び使用を規制する仕組みが設けられました。

 平成13(2001)年からは環境省も厚生労働省、経済産業省とともにこの法律を所管することとなりました。

 平成16(2004)年からは、化学物質への動植物への影響に着目した審査・規制制度、環境中への放出可能性を考慮した一層 効果的かつ効率的な措置等を導入しています。

 平成21(2010)年からは、化学物質包括的な化学物質管理の実施によって、有害化学物質による人や動植物への悪影響を防止するため、国際的動向を踏まえた規制合理化のための措置等を講じています。

 PCB(ポリ塩化ビフェニル:ビフェニルの水素原子が塩素原子で置換された化合物の総称)は、

化学的安定性(耐薬品性)、耐熱性(不燃性)、電気絶縁性、高脂溶性に優れており、

下表のように、戦前から、驚くほど広い分野で使用されていました。

日本では、1954年(昭和29年)から生産が開始され、1972年(昭和47年)までに約5万4千トンが生産・使用されました。

 

なお、使用されていた分野が極めて広いこと、

有害物質と判断されてから分解処分を開始するまでの期間が長かったことなどから、

今後も“あらためて社会問題化する”危険性は残っています

 

詳しい処理の現状は、環境省パンフレットをご覧ください。

ポリ塩化ビフェニル(PCB)使用製品及びPCB廃棄物の期限内処理に向けて」(全12ページ)

PCBの処理は、洗浄法・真空加熱分離法、脱塩素分解法、プラズマ溶融分解法で実施されているようです。

(中間貯蔵・環境安全事業株式会社 北九州PCB処理事業所「北九州PCB廃棄物処理事業だより(No.1)」

 

PCBの毒性について、次の項目「カネミ油症」事件でも記載しますが、

WHO(世界保健機関)が、化合物の中で最も毒性のあるダイオキシン類に近いこともあり

ダイオキシン様PCB(dioxin-like PCB, DL-PCB) と呼びダイオキシン類に加えています

 

PCBは、

油に溶けやすく水には溶けにくいため、

本来は、廃水浄化処理の対象物質ではありません。

しかし、人類が作った化学的に極めて安定した性質を持つ合成高分子化合物の代表例として、

また、

水溶性物質と懸濁物質の項で、「溶解している」と「分散している」の境界は微妙、

と記載したように、

今後新たに製造されるどんな物質であっても

想定されない形態で廃水浄化処理の対象になる可能性があるため、取り上げました。

 

現実に、環境省資料などによると、

PCBは、水、底質や生物など広範囲に残留し、

周辺でPCBを使用していない極地の人・野生生物、遠洋の魚介類等にもPCB汚染が拡大している、

のが実態です。

残留PCB濃度

※m(ミリ)=千分の1、μ(マイクロ)=100万分の1、n(ナノ)=10億分の1、
p(ピコ)=1兆分の1、ppm=100万分の1、ppb=10億分の1、ppt=1兆分の1

 

 環境省の「PCB廃棄物問題の現状」には、以下の記載があります。

PCBは、

①環境中で分解しにくい(難分解)、

②食物連鎖などで生物の体内に濃縮し易い(高蓄積性)、

③大気流、海流などにより長距離を移動して、極地などに蓄積しやすい(長距離移動性)、

④人の健康や生態系に対し有害性がある(毒性)、

といった性質を持つ残留性有機汚染物質(Persistent Organic Pollutants:POPs)の代表例です。

 PCBが、有害物質であると一般に知られるきっかけになった「カネミ油症」事件は、

PCBが全世界に流通し始めてから、数10年経過して発生し、

「カネミ油症」事件が明らかになってからは、約半世紀が経ちますが、現在でも被害者は多くおられます。

理由は、PCBが水には溶けにくいが、油には溶けやすいという特性があるため、

食べた方が女性の場合、脂肪分が多い胎盤や母乳を通じて、生まれた赤ちゃんに引き継がれてしまっているからです。

詳しい情報などは、厚生労働省の「健康危機・健康被害への対応」というページから閲覧できます。

油症診断基準、医療機関向け「カネミ油症の手引き― 症状と治療について ―」などが閲覧できます。

 

事件は、

実際に発生してしまうと、

故意・過失などの責任の所在を抜きにして、

加害者側および注意義務責任者あるいは国や地方公共団体など社会的補償を担うべき側と、

被害者側での溝は、どんなに時間をかけて治療しても、改善策を模索しても、簡単には埋めることが出来ません。

事件を起こす前に、回避すべき考え方と、回避せざるを得ない仕組みを構築する必要があります。

そのためには、

ほとんどの人が、他人事ではなく、自分のこととして考えるようになって、初めて改善・改革・変革へと向かいます。

人は、神様のようなものでは無く、一定程度の確率で、必ず間違いを起こすものですから、

普段から、簡単に結論を出してしまうのではなく、深く考える習慣をつける、

つまり、「探究」する必要性を理解し、

身に着ける努力を継続する、

(義務)教育を基礎として、このような潮流が生まれるように思います。

※カネミ油症とは?
カネミ油症は、昭和43年10月に、西日本を中心に、広域にわたって発生した、ライスオイル(米ぬか油)による食中毒事件です。

 事件の原因は、カネミ倉庫社製のライスオイル(米ぬか油)中に、製造の際の脱臭工程の熱媒体として用いられた、鐘淵化学工業(現カネカ)社製カネクロー ルが混入していたことでした。このため、ポリ塩化ビフェニル(PCB)や、ダイオキシン類の一種であるポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)等が、製品のラ イスオイル(米ぬか油)の中に混入しました。

 症状は、吹出物、色素沈着、目やになどの皮膚症状のほか、全身倦怠感、しびれ感、食欲不振など多様です。こうした症状が改善するには長い時間がかかり、現在も症状が続いている方々がいます。

「油症診断基準」
「カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進に関する法律」が制定され、
同法に基づく「カネミ油症患者に関する施策の推進に関する基本的な指針」に基づき、国から、事件当時の同居家族で健康被害を受けた者が、家族内で認定結果が分かれることのないよう、診断基準を拡大する方向で見直すよう要請されています。

 

1、イタイイタイ病

 700年代にはすでに発見されていた銀や銅を含有する鉛鉱や亜鉛鉱を採掘・選鉱・製錬する鉱山(神岡鉱山)で、

亜鉛製錬(精錬)の際、亜鉛に含まれている不純物のカドミウムが神通川に流出してしまい、

神通川を水源としていた耕作地で収穫された農作物を摂取したり、

地下水を介してカドミウム汚染水となった井戸水を飲用したりしたことなどにより、

厚生省(当時)の公式見解によれば、

「イタイイタイ病の本態はカドミウムの慢性中毒によりまず腎臓障害を生じ、

次いで骨軟化症をきたし、

これに妊娠、授乳、内分泌の変調および栄養としてのカルシウム等の不足などが誘因となって、

イタイイタイ病という疾患を形成したものである。

骨軟化症のため、容易に骨折がおこったり、そのため激しい痛みを患者が感じ、体型の変型をおこす。

三井金属鉱山神岡工業所の事業活動にともなって排出されたカドミウム等の重金属が神通川を汚染し、

かつ流域の土壌汚染をひきおこし、食品濃縮の過程を経て人間に多量のカドミウムが摂取された結果、

発病したもの」とされています。

 

 カドミウム

人にとっての必須元素の亜鉛と化学的挙動が似ているため、亜鉛鉱には必ずカドミウムが含まれていますが、

亜鉛とはまったく異なり、必須元素ではなく、

水質汚濁防止法では、「カドミウム及びその化合物」として有害物質に分類されています

植物にとっても、不要とされているため、

土壌中の濃度が高いときに植物の生育を阻害しますが、

植物の生育阻害が認められる水準以下で、植物が生育する範囲の濃度あっても、

その植物を摂取したヒトや動物に被害を生ずる可能性は、残ります

土壌中の平均濃度は環境庁の調べ(昭和58年農用地)では、0.34ppmです。

しかし、カドミウムは現在でも広く使用されており、

一般的な用途は、ニッカド電池、半導体、原子炉の制御用材料などです。

 

 イタイイタイ病は、日本で初めて国から公害病として認定されています。

1971(昭和46)年、公害裁判として初めて被害住民が勝訴し、その後の控訴審も被害住民側が勝訴となりました。

 

以下は、「昭和48年版環境白書 総説 第2章 開発と環境 第1節 四大公害裁判の教訓」からの
抜粋(一部文字装飾)および要約(一部加筆)です。

46年6月に行なわれた判決は、因果関係について疾病を統計学的見地から観察する疫学的立証法を導入し、その観点からの考察を中心に、臨床と病理的所見等を付加した上で、三井金属鉱業神岡鉱業所から排出される廃水とイタイイタイ病との間に相当因果関係が存することを認定した。

 そして、大筋においてそのような説明が科学的に可能な以上、被告が主張するカドミウムの人体に対する作用を数量的な厳密さをもって確定することや経口的に摂取されたカドミウムが人間の骨中に蓄積されるものかどうかの問題はいずれもカドミウムと本病との間の因果関係の存否の判断に必要でないとされ、法律的な意味で因果関係を明らかにすることと、自然科学的な観点から病理的メカニズムを解明するために因果関係を調査研究することとの相違が明確にされた。このことは、公害裁判における原告側の因果関係の挙証責任を事実上緩和することを意味するものである。

故意または過失責任については、イタイイタイ病訴訟が鉱業法の無過失責任規定に基づく訴えだったため、争点として登場しませんでした。(鉱業法 第六章鉱害の賠償 第一節賠償義務

 

富山県イタイイタイ病資料館の「イタイイタイ病に学ぶ」は、子供さんでも読みやすい小冊子です。

イタイイタイ病の歴史を人の実際の行動心の動きなどの背景まで伝えるように記載されています。

「イタイイタイ病に学ぶ」には、次のような記載があります。

『みなさんが、イタイイタイ病を身近な問題として感じ、

同じようなことを二度と起こさないために

「何をすればよいのか?」を

自分で考えられるような人になってもらえたら、とてもうれしいです。』

参考として:金属イオンの理論溶解度とpHの関係

カドミウム(Cd2⁺)が塩素や硫黄などと合成された場合、ほとんどが無色で水溶性です。

カドミウム含有廃水を浄化処理する場合の一般論について、以下に記載します。

カドミウムを含む重金属や共存キレート剤や分散剤は、種類・濃度が分かれば、理論的・経験的に適切な処理法やアルカリ剤の選定が可能といえます。重金属含有排水は一般に酸性で、アルカリ剤を添加してpHを上げていくと、大部分の重金属の水酸化物が、析出・凝集沈殿します。水酸化物法と言いますが、原理は、pHを上げる、すなわちOH⁻が増えますので、水酸化物イオン濃度が高くなり、金属イオンの溶解度が小さくなるという原理です。水酸化物は沈殿します。

カドミウムの場合、アンミン・シアノ・有機酸・EDTA等と安定な錯体となるため、水酸化物法を採用せずに不溶化処理してから回収する浄化処理方法が採用されますが、一般的に、キレート剤や分散剤の含有量が多くなると、水酸化物法では重金属を沈殿除去できなくなりますので、置換法などを実施することになります。

原水には、2~3種類以上の金属が溶解して共存している場合が多いため、共沈現象や共通イオンの効果によって、理論より1~2低いpHで沈殿することになります。

ただし、錯体を形成していない場合や硫酸イオンや塩化物イオンとの錯体の場合は不安定なため、水酸化物法で難溶性塩として沈殿分離できます。

なお、pH12以上で再溶解するため注意が必要ですが、亜鉛や銅などに比べるとその傾向は低くなります。

アルミニウム、鉛、亜鉛、銅、クロム、ニッケル、マンガンは、pHが高くなると再溶解することが読み取れます。これらは両性金属(=酸とも塩基とも反応する物質)と呼ばれます。なお、Feの表示には、不正確な部分があります。

 
 1956(昭和31)年5月1日に、熊本県水俣市で原因不明の病気が発生していると、
 
新日本窒素(後にチッソ)附属病院から水俣保健所に報告があり、
 
この日が水俣病の発生が公式に発見された日となっています。

以下は、「昭和48年版環境白書 総説 第2章 開発と環境 第1節 四大公害裁判の教訓」
を転載(一部文字装飾)しました。

水俣病訴訟
 水俣病訴訟は、熊本県水俣地区とその周辺の住民が44年6月にチッソ株式会社に対して行なった損害賠償請求訴訟である。わが国の公害のいわば原点ともいうべき水俣病に関して行なわれたこの訴訟は、一つの訴訟としては、原告側被害者138人という四大公害訴訟中最大のものであると同時に、その判決が、いわゆる自主交渉グループや公害等調整委員会に調停を求めるグループなど訴訟とは別に行なっている水俣病交渉の動静に対して大きな影響を与えるものとして、社会的注目を浴びてきた。

 この訴訟においては、チッソ水俣工場の廃液放出と水俣病発病との因果関係について、43年12月の政府見解に従うとして被告企業もこれを認めたため、最終的には争われなかったが、最大の争点となった被告の責任については、48年3月に行なわれた判決は、被告の注意義務違反を指摘し、過失責任があったことを認めた。すなわち、化学工場は、その廃液中に予想外の危険な副反応生成物が混入する可能性が大きいため、とくに、地域住民の生命・健康に対する危害を未然に防止する高度の注意義務があるにもかかわらず、被告側の対策、措置にはなに一つとして納得のいくようなものはなく、被害の過失の責任は免れえないと述べている。

 また、判決は、その他の争点についても、過去に行なわれた両当事者の見舞金契約の有効性や損害賠償請求権の消滅時効などに関する被告側の反論をしりぞけた

一般条件下での水銀含有廃水の浄化処理が必要とされるケースは、ごみ焼却廃水などがあります。

水銀は、今でも一般流通しており、分別せずに一般ゴミとして廃棄される可能性があるからです。

有機水銀は、水銀と炭素が直接結合した化合物で、

生物に対して著しい毒性を示し、炭素数の少ない有機水銀ほど結束力が強く分解し難い傾向があります。

一般論として、

有機水銀含有廃水の浄化処理方法は、次の通りとなります。

有機水銀は、pH1以下の強酸性溶液の場合、CH-Hg結合が破壊されますので、

強酸で酸化分解した後、

硫化物処理をすることになります。

 

3、新潟水俣病(第二水俣病)

 1965年(昭和40年)5月31日に新潟大学から新潟県庁に報告(公式確認日とされる)があり、

6月12日に阿賀野川流域に有機水銀中毒患者7人発生、うち2人死亡と発表されました。

新潟水俣病も、完治しない被害(病気)であること、被害の程度がさまざまで、認定制度の壁があることなど、

実態を広く知るためには、以下のいずれか、あるいはウィキペディアなどの資料を読む必要があります。

新たな被害者は出ていないようですが、現在でも解決していない公害です(係争中の裁判もあります)。

以下は、「昭和48年版環境白書 総説 第2章 開発と環境 第1節 四大公害裁判の教訓」
を転載(一部文字装飾)しました。

新潟水俣病訴訟

 この訴訟は、新潟県阿賀野川流域の住民が昭和42年6月(第一次訴訟)に、昭和電工株式会社を被告として、同社の鹿瀬工場からの廃液に含まれているメチル水銀化合物により汚染された魚類を摂取したため、新潟水俣病に罹患し、重大な被害を被ったことに対する損害賠償を請求したものである。

 裁判の審理の過程においては、新潟水俣病と昭和電工鹿瀬工場の廃液との因果関係および昭和電工の故意または過失責任が主たる争点となった。

 とくに、故意または過失責任については、先のイタイイタイ病訴訟が鉱業法の無過失責任規定に基づく訴えだったため、争点として登場しなかったが、本訴訟においては大きな争点としてとりあげられた。

 46年9月の判決において、まず、因果関係について、原因物質および汚染径路について様々の情況証拠により、関係諸科学との関連においても矛盾なく説明でき、汚染源の追求が被告企業の門前に達した時には、被告企業において汚染源でないことの証明をしない限り、原因物質を排出したことが事実上推認され、その結果工場排水の放出と本疾病の発生とは、法的因果関係が存在するものと判断すべきであるとされた。

 また、被告企業の責任については、鹿瀬工場の排水中にメチル水銀が含まれており、それが阿賀野川沿岸住民を水俣病に罹患させることがあっても、被告がこれを容認していた事実は認められず、従って、故意があったことを裏づけるに足る証拠はないとされたが、過失について

? 化学企業としては、有害物質を企業外に排出させることのないよう常に安全に管理する義務がある。しかるに被告は、熊本大研究班の有機水銀説等に謙虚に耳を傾けることもなく慢然と水俣病の先例をいわば対岸の火災視していたため、十分な調査分析を怠り、工程中にメチル水銀化合物が副生し、かつ、流出していたのに気づかず、これを無処理のまま工場排水とともに、放出し続け、沿岸住民を水俣病に罹患させたことに過失があったと認められる。

? 企業の生産活動も一般住民の生活環境保全との調和においてのみ許されるべきであり、最高の技術設備をもってしてもなお人の生命身体に危害が及ぶおそれがあるような場合には、企業の操業短縮はもちろん、操業停止まで要請されることもあると解する。

として、人の生命身体の安全確保に対する企業の注意義務違反が指摘された。

 

4、四日市公害

 硫黄酸化物による大気汚染を原因とした集団喘息(ゼンソク)障害のみを四日市喘息と呼ぶ場合もありますが、

水質汚染による環境問題を含め四日市公害と呼びます。

1972年に被害住民側が四日市公害裁判に勝訴しています。

1973年に公害健康被害補償法が制定されています。

大気汚染を改善した主たる要因は、脱硫装置の普及と硫黄分の少ない原油への切り替えと考えられているようです。

以下は、「昭和48年版環境白書 総説 第2章 開発と環境 第1節 四大公害裁判の教訓」
を転載(一部文字装飾)しました。

四日市公害訴訟
この訴訟は、三重県四日市市磯津地区の住民が、42年9月に四日市コンビナートを形成している6社を被告として、これらの6社の排煙により発病し重大な被害を被ったことに対する損害賠償を請求したものである。

 審理の過程において、主たる争点となったのは、共同不法行為の成立、故意または過失責任、因果関係等であり、47年7月に判決が下された。

 四日市公害訴訟は、他の公害訴訟がいずれも一つの企業が重金属を排出した結果生じた公害を問題にするものであるのに対し、コンビナートを形成している多数の工場からの排出による公害が問題にされた最初の訴訟であり、しかもばい煙による公害という全国各地にみられる公害が裁かれるという意味で注目されていた。

 判決において、まず、共同不法行為責任に関し被告の工場が順次隣接し合って集団的に立地し、しかも、だいたい時を同じくして操業を開始しているので客観的な関連共同性を有していると認められ、そのような場合には、結果の発生についての予見可能性がある限り、共同不法行為責任があるとされた。

 さらに、工場の間に機能的、技術的、経済的に緊密な結合関係があると認められる場合にはたとえ一工場のばい煙が少量で、それ自体としては結果の発生との間に因果関係が存在しないと認められるような場合においても、結果に対して共同不法行為責任を免れないこととされた。

 次に、被告6社の故意または過失責任に関しては、故意は認められないものの、次の2つの点において、過失があるとされた。まず、被告はその工場立地に当たり、住民の健康に及ぼす影響について何らの調査、研究もなさず慢然と立地したことが認められ、立地上の過失があるとされた。

 次に、被告は、その操業を継続するに当たっては、ばい煙によって住民の生命、身体が侵害されることのないように操業すべき注意義務があるにもかかわらず、慢然と操業を継続した過失も認められるとされた。

 一方、被告が、四日市への進出は、国や地元の奨励によるものであると主張したことについては、たしかに当時の国や地方公共団体が経済優先の考え方から、工場による公害問題の惹起などについて事前の慎重な調査検討を経ないまま、工場誘致を奨励するなどの落度があったこともうかがわれるけれども、企業側が、工業進出に関し激烈な払い下げ運動を行なったこと等は明らかな事実であり、被告の過失を否定するにはたりないとされた。

 また、被告が、そのなしうる最善の大気汚染防止措置を講じて、結果回避義務を尽した以上被告に責任はないと主張したことに対しては、少なくとも人間の生命、身体に危険のあることを知りうる汚染物質の排出については、企業は経済性を度外視して、世界最高の技術、知識を動員して防止措置を講ずべきであり、そのような措置を怠れば過失は免れないと解すべきであるとされた。

 最後に、因果関係について、各種の疫学調査によると、磯津地区の閉塞性呼吸器疾患とばい煙は明確な因果関係があり、大気汚染以外の因子は、いずれも大気汚染の影響を否定するに足るほどのものでないとされ、これまでの判決と同様の姿勢が示された。

 水道水の場合、水質基準は、水道法第4条に基づく水質基準に関する省令により、定められています。

上記以外に安全対策として、

将来にわたり水道水の安全性の確保等に万全を期するため、水質基準以外に、水道水質管理上留意すべき項目として、

水質管理上留意すべき項目を「水質管理目標設定項目(27項目)」(内、農薬類「農薬類(114項目)」)として、

毒性評価が定まらない物質や、水道水中での検出実態が明らかでない項目を「要検討項目(46項目)」として、

があり、必要な情報・知見の収集に努めています。項目は、増える傾向にあります。

水道水は、水質基準に適合するものでなければならず、水道法により、水道事業体等に検査の義務が課されています。

水道事業者は、水質基準項目等の検査について、水質検査計画 を策定し、需要者に情報提供することとなっています。

 内分泌かく乱化学物質や、マイクロプラスチック(5mm未満)の超極小物なども合成(高分子)化合物です。

内分泌かく乱化学物質は、自然界に対する影響がすでに指摘されていますが、

結果と原因の因果関係を明確に証明することが困難な状況です。

これら以外にも、環境への影響が微妙に危惧される物質として、

法令の枠外で設定されている「要監視項目」があります。

 

内分泌かく乱化学物質以外には、

プラスチックのミクロサイズ細菌やウィルスあるいはこれ以下の大きさ)の生物分解しないさまざまな異物は、

低価格化が進んだ衣料品の主原料である化学合成繊維などから大量に排出されていて、

(小)魚や(小)鳥などでも、簡単に、多量に、経口摂取してしまうような時代になってきています。

これらの物質が生体(細胞)内へ侵入した場合

どのような経過を経て、体外へ排出されるのか、

また、侵入による影響など、

調査する研究も進められています。

 

生態ピラミッドの頂点に立つ人間は、

病原性細菌、有害物質、内分泌かく乱化学物質、プラスチックのミクロサイズ(細菌やウィルス以下の大きさ)などを

下位のさまざまな植物を含む生物が、極めて微量であっても、直接接種した場合、

生体(細胞)内で少しづつ蓄積することを食物連鎖で繰り返すことになりますので、

汚染状態が、ピラミッドの上位に向かって増幅された段階で

否応なしに生体(細胞)内に取り込むことになります。

 

なお、分子量(高分子or低分子)や生分解性などにかかわらず、

化学合成物質あるいは、あらゆる人工生成物質について、

その作用は、分解あるいは生分解あるいは代謝などされるまで、必ず一定期間は継続します

予定して、あるいは、間違って生体(細胞)内に入るなどした場合、

その化学物質による、当初の目的ではないが、予期しなかった作用が出た場合、

当然のこととして、悪い影響であった場合には、対処・治療する必要がありますが、

先ず、予期しなかった作用が出たさまざまな事情や制度などの背景を詳しく調査し、適切に評価する必要があります。

さらに、大きな壁として、

もたらされたさまざまな取り返しがつかないような重大な悪影響(=結果)と、

内分泌かく乱化学物質などの人工生成物質(=原因)との因果関係を証明するのが、不可能に近い困難さがあります。

さらに、

結果と原因の因果関係が、科学的・医学的に証明できない場合に

対処・治療方法の解明をするためには、

その化学物質の作用がなくなるまでのプロセスについて、長期間をかけて、解明する必要性があります。

プロセスを解明した後、代謝を促進するさまざまな手段からどの方法を選択するのか、

より安全な方法は何かについて、さらに長期間かけて、検証する段階に進むことが出来ます。

このプロセスを解明する途方もない時間と困難さ(=問題が起こってから対処方法を究明する方法)と、

化学物質を流通させる前に、厳しいチェックをすることのわずらわしさ、を比較検討すると、

どういった選択をする方がより良いのか、

上記のような歴史の実例の経過を振り返って、良く検証する必要があります。

こういった難問解決に通じる考え方として、

後述する「予防原則」の考え方があり、「予防原則の適用事例」にも詳細を記載しています。

生体内の代謝について(整備中)

 ひとつの例を記載します。

日本バイオプラスチック協会(JBPA)に記載されている内容をそのまま転記します。

当協会は、循環型社会の実現に重要な役割を果たす新素材であるバイオプラスチック(生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの総称)の普及促進と試験・評価制度の確立を目的に、1989年に設立された民間団体です。

設立以来、関係省庁や関連団体との協力の下に、様々な活動を行ってきました。主な活動としては、識別表示制度の運営、国際規格ISOへの対応、JIS原案の作成、バイオプラジャーナル誌の発行、展示会への出展、会員への海外情報の提供、行政への提言・協力、などが挙げられます。

当協会はバイオプラスチックの普及啓発活動を通じて、持続可能な循環型社会形成づくりのために寄与して参ります。

 いろいろな物質が合成できる時代になって、後になってから問題視されるようになった物質として、

ポリ塩化ビフェニル(PCB)、DDT、有機水銀、各種農薬など、

たくさんの分解が困難な有害物質が、自然界に放出されました。

自然界では、まず微生物による生分解の対象になります。

微生物による分解が困難な物質は、

人や環境への悪影響の有無について、代替生物による試験など、いろいろな条件下で検査したとしても、

人生を変えるような取り返しがつかないような有害性が無いと断言できるまで検査することは極めて困難です。

したがって、万が一、

今後も、新たな分解が困難な物質が、そのまま自然界に放出された場合、

過去に発生した4大公害病など、同じような問題は、何度も繰り返される恐れがあります。

人生や環境をまったく変えてしまうような取り返しがつかないような事態は、事後の補償だけでは済まされません。
 

このような歴史を踏まえて、

先進国の一部では、「予防原則」という観点から、

先述の環境リスクの評価対象になるような化学物質や遺伝子組換えなどの新技術などに対して、

環境に重大な影響を及ぼす恐れがある場合

科学的に因果関係が十分証明されない状況でも、規制措置を制度化する方向に動いています。

 予防原則とは、

被害者側の利益を守る立場で、国の行為を強制する言い回しにしたリオ宣言の中の

第15原則として、予防原則の定義が一般的となっています。

「環境を保護するため、予防的方策は、各国により、その能力に応じて広く適用されなければならない。深刻な、あるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由として使われてはならない。

※地球サミット(環境と開発に関する国際会議) リオ宣言 1992年
国連に加盟しているほぼすべての約180カ国が参加し、100カ国余の元首または首相が参加するという史上かつてないほどの大規模な会議。

 

 予防原則の考え方は、

生産者側にとっては厳格な規制となるため、法制度として取り入れるには、難しい面があるようです。

 

しかし、米国の裁判では、除草剤による環境被害を理由に、メーカーに対する多額の損害賠償請求が成立するなど、

流通し、環境問題が明確になってから、補償問題を理由に、製造・販売そのものを見直す必要に迫られる事態です。

 

化学物質によっては、環境に与える損害が極めて甚大に、

例えば、人命にかかわるような事態、あるいは、通常の生活ができないさまざまな障害をもって誕生する、

さらに、その状態が直ぐに収束するのではなく、長期間継続してしまうなど、

取り返しがつかない事態をまねいた歴史がありますので、

現在の法制度のまま、被害者に立証責任を求めることが妥当なのか、

あるいは、安全性について、より厳しいチェック制度を製造者に求める新たな規制を含め、

製造する、あるいは流通する前にチェックする(あるいは禁止できるような)体制が良いのか、

事後に裁判で争うのが良いのか、

四大公害裁判の司法判断など、歴史を振り返って、よくよく考える必要があります。

 以下は、社団法人 日本化学工業協会 予防原則 Q&Aより抜粋した内容です。

予防原則を実際に適用した事例は、①オゾン層保護に関する国際条約、②狂牛病が挙げられます。

対応が求められている事例として、「内分泌かく乱物質問題」があります。

「内分泌かく乱物質問題」は、

環境暴露濃度(プラスチック容器などから溶出する程度のわずかの量)摂取したときに、

実際に内分泌かく乱が引き起こされるのかどうかについては、専門家の間で議論があります。

このように専門家の間でも結論が出ていない問題ですが、

次世代への影響があるかもしれないという懸念があるということで、

「予防的な処置」として、これらの物質をふくむ各種のプラスチックの使用中止や、

より安全性の高い物質への代替、あるいは、成分表示を求める動きがあります。
 

このように、「科学的には不明確」でありながら、

「次世代への影響(仮に影響があるとしても現時点では、分からない)」についての懸念があるということで、

「予防的な処置」あるいは「予防原則」に従った対応を求めるというのが、

「内分泌かく乱物質問題」の本質であるといえます。

ホルモン剤の具体的事例を挙げます。​

 

「欧州と米国の間の牛肉輸入禁止措置ケース」1989 年欧州が輸入を禁止した事例

合成ホルモン DES(ジエチルスチルベステロール)により

障害を持って赤ちゃんが生まれたとされるケースが欧州で当時広く報道され、

この DES が子牛肉から作られたベビーフードから検出されたという事件があります。

この DES 事件をきっかけに、ホルモン使用反対の消費者運動が欧州で一気に広がりました。

これに対し米国では、毒性の明らかになった DES は別として、

EC が禁止した6 種のホルモンについては人体に悪影響ありとの確証が出てこないので、

牛肉生産の生産性を上げる為使用を継続していました。

そこでこのEU決定に科学的根拠を欠くとする米国は、(当時はWTO成立前だったので)、

GATTのスタンダード協定に基づいて EU を訴えました。

しかし同協定にはこの種の紛争に適切な紛争処理メカニズムを備えておらず、

その後 10 年以上未解決のままこの問題は放置されていました。

1995 年に WTO が設立されると、米国は改めて EU の禁輸措置には科学的根拠がないとして、

新設 WTO に提訴しました。

 

WTO は、1996 年 5 月にパネル(一審に相当)を設置して本件の審議を始めました。

パネルは 1997 年 8 月報告書を纏め、その中で

“ EU の禁輸措置は国内産業保護を目的とした差別又は偽装した貿易制限である”

との認定をし、EU は敗訴しました。

 

EUは、不服として、1997 年9 月上級委員会(最高裁に相当)へ申し立てを行いました。

これに対し上級委員会は 1998 年 1 月報告書を提出しました。

その中で上級委員会は、

予防原則について、「(省略)科学的なリスク評価を免責するものではない。」とし、

「EUの禁輸措置は差別又は偽装した貿易制限ではない」とパネルの認定を否定したものの、

その措置の実施にあたり、リスク評価を十分に行なってない、として

EU に対し再び敗訴の裁定を下しました。

 現在のところ、日本において予防原則が法律に明記されたり、環境政策・規制の過程で適用された例はありません。

しかし、四大公害訴訟の判決での司法判断は、

汚染物質や有害物質などの排出者側の原因と被害者側の結果については、相当因果関係をもって挙証責任を認定し、

同じく排出者側の責任については、身体や健康危害を未然に防止する高度の注意義務を基準として認定し、

汚染物質や有害物質などの排出者側に対して、非常に厳しい判断基準を示しています。

約50年前に示された司法判断です。

これらの司法判断は、

製造者あるいは販売者、あるいは製造・販売の規制に関わる国や行政に対して、

使用者、あるいは行政運営に従う国民の関係でも成立するのではないでしょうか

したがって、製造者と使用者の利害関係では、「製造物責任(PL)法」という法律が既に施行されています。

 

 さらに、このページのテーマと異なりますが、発生状況が類似している新たな事例として、

新型コロナワクチン接種によるさまざまな後遺症、因果関係が疑われる2,000件前後の死亡事例が発生しました。

国の制度として実施した取り組みに従った国民の不幸について、政府として、

当然に、対応しなければなりません。

国家が、結果として作ってしまった原因と、

被害を受けた国民の結果についても、

相当因果関係をもって挙証責任を認定しなければなりません。

国の責任については、

ワクチン接種を急いだ当時の事情を踏まえても、

必要性があって厳格な承認制度だったものを省略したのですから、

実施したワクチン接種の結果については、

4大公害病訴訟がそうであったように、

身体や健康危害を未然に防止する高度の注意義務を基準として認定する制度が必要です。

なお、行政運営は、全て法律に基づいて実施されなければなりませんので、

国民の不幸に対応するためには、法令に基づく制度が必要です。

立法を仕事として、国民の税金から給与を得ている国会議員の皆さんは、至急法整備をする必要があります。

コロナ禍終息後の現在、立法不作為の状況にあると評価できます。


 ところで、原因と結果の因果関係を被害者側に証明させる方法のひとつに、以下のエコチル調査があります。

また、悪影響の疑惑が否定できない物質については、先述した「化学物質管理制度」、

排水規制関係では、法令の枠外で、後述する「要監視項目」、

農薬の水域での濃度規制として、後述する「農薬取締法」による農薬登録拒否の制度などがあります。

 エコチル調査(2011年1月から2027年までを予定)とは、

「胎児期から小児期にかけての化学物質曝露をはじめとする環境因子が、

妊娠・生殖、先天奇形、精神神経発達、免疫・アレルギー、代謝・内分泌系等

に影響を与えているのではないか」という仮説(中心仮説)を解明することや、

化学物質のばく露等が、

胎児期から小児期にわたる子どもの健康にどのような影響を与えているかを明らかにし、

適切なリスク管理体制の構築につなげるために実施されています。

 

赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいるときから13歳になるまで健康状態を定期的に調べる、

出生コーホート(集団を追跡する)調査です。

具体的には、

子どもの健康と環境に関して、全国15地域、10万組の子どもたちとその両親に参加してもらい、

質問票への記入や血液・尿・毛髪などの試料を採取・提供していただき、

診療状況や健康状態について調査するものです。

 水環境では、その水域の環境を保全するため、排水規制の制度が有ります。

排水規制制度は、法令に基づいていますが、法令による規制をすべきかどうか、しかし監視はする必要がある、

というような環境への影響が微妙な化学合成物質について、

排水規制制度における化学物質への対応策として、

法令の枠外で、「要監視項目」を設けています

要監視項目が設定されているのは、環境基本法に基づいて実施されている「中央環境審議会」の答申によるものです。

要監視項目は、法令ではなく答申に基づいて、下の2種類が設定されています。

先に記載した「指定物質」は、

環境保全項目すべてにについて、1日の平均排水量が50立米以上の場合に、濃度を規制しています。

しかし、要監視項目は、それぞれの物質についての濃度を「指針値」として示しています

①人の健康の保護に関連する物質ではあるが、公共用水域等における検出状況等からみて、直ちに環境基準とはせず、引き続き知見の集積に努めるべきもの(=人の健康の保護に係る項目

②生活環境を構成する有用な水生生物及びその餌生物並びにそれらの生息又は生育環境の保全に関連する物質ではあるが、公共用水域等における検出状況等からみて、直ちに環境基準とはせず、引き続き知見の集積に努めるべきもの(=水生生物の保全に係る項目

「環境基本法」

第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。

(定義)
第二条 この法律において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。

2 この法律において「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。

3 この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。第二十一条第一項第一号において同じ。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。以下同じ。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。

(環境の恵沢の享受と継承等)
第三条 環境の保全は、環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること及び生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており人類の存続の基盤である限りある環境が、人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることにかんがみ、現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない。

(環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等)
第四条 環境の保全は、社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減することその他の環境の保全に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようになることによって、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨とし、及び科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨として、行われなければならない。

(国際的協調による地球環境保全の積極的推進)
第五条 地球環境保全が人類共通の課題であるとともに国民の健康で文化的な生活を将来にわたって確保する上での課題であること及び我が国の経済社会が国際的な密接な相互依存関係の中で営まれていることにかんがみ、地球環境保全は、我が国の能力を生かして、及び国際社会において我が国の占める地位に応じて、国際的協調の下に積極的に推進されなければならない。

(国の責務)
第六条 国は、前三条に定める環境の保全についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(地方公共団体の責務)
第七条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、環境の保全に関し、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(事業者の責務)
第八条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずるばい煙、汚水、廃棄物等の処理その他の公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する。

2 事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が廃棄物となった場合にその適正な処理が図られることとなるように必要な措置を講ずる責務を有する。

3 前二項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が使用され又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するように努めるとともに、その事業活動において、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するように努めなければならない。

4 前三項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。

(国民の責務)
第九条 国民は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。

2 前項に定めるもののほか、国民は、基本理念にのっとり、環境の保全に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。

第二章 環境の保全に関する基本的施策
第一節 施策の策定等に係る指針
第十四条 この章に定める環境の保全に関する施策の策定及び実施は、基本理念にのっとり、次に掲げる事項の確保を旨として、各種の施策相互の有機的な連携を図りつつ総合的かつ計画的に行わなければならない。

一 人の健康が保護され、及び生活環境が保全され、並びに自然環境が適正に保全されるよう、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること。

二 生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られるとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全されること。

三 人と自然との豊かな触れ合いが保たれること。

第二節 環境基本計画
第十五条 政府は、環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。

2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

一 環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱

二 前号に掲げるもののほか、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 環境大臣は、中央環境審議会の意見を聴いて、環境基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。

4 環境大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、環境基本計画を公表しなければならない。

5 前二項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。

中央環境審議会
第四十一条 環境省に、中央環境審議会を置く。

2 中央環境審議会は、次に掲げる事務をつかさどる

一 環境基本計画に関し、第十五条第三項に規定する事項を処理すること。

二 環境大臣又は関係大臣の諮問に応じ、環境の保全に関する重要事項を調査審議すること。

三 自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(昭和四十五年法律第百三十九号)、自然環境保全法(昭和四十七年法律第八十五号)、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和四十八年法律第百五号)、瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和四十八年法律第百十号)、公害健康被害の補償等に関する法律(昭和四十八年法律第百十一号)、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(平成四年法律第七十五号)、ダイオキシン類対策特別措置法(平成十一年法律第百五号)、循環型社会形成推進基本法(平成十二年法律第百十号)、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成十二年法律第百十六号)、使用済自動車の再資源化等に関する法律(平成十四年法律第八十七号)、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成十四年法律第八十八号)、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成十六年法律第七十八号)、石綿による健康被害の救済に関する法律(平成十八年法律第四号)、生物多様性基本法(平成二十年法律第五十八号)、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(平成二十年法律第八十三号)、水銀による環境の汚染の防止に関する法律(平成二十七年法律第四十二号)及び気候変動適応法(平成三十年法律第五十号)によりその権限に属させられた事項を処理すること。

3 中央環境審議会は、前項に規定する事項に関し、環境大臣又は関係大臣に意見を述べることができる。

4 前二項に定めるもののほか、中央環境審議会の組織、所掌事務及び委員その他の職員その他中央環境審議会に関し必要な事項については、政令で定める。

(都道府県の環境の保全に関する審議会その他の合議制の機関)
第四十三条 都道府県は、その都道府県の区域における環境の保全に関して、基本的事項を調査審議させる等のため、環境の保全に関し学識経験のある者を含む者で構成される審議会その他の合議制の機関を置く。

2 前項の審議会その他の合議制の機関の組織及び運営に関し必要な事項は、その都道府県の条例で定める。

(市町村の環境の保全に関する審議会その他の合議制の機関)
第四十四条 市町村は、その市町村の区域における環境の保全に関して、基本的事項を調査審議させる等のため、その市町村の条例で定めるところにより、環境の保全に関し学識経験のある者を含む者で構成される審議会その他の合議制の機関を置くことができる。

第二節 公害対策会議
(設置及び所掌事務)
第四十五条 環境省に、特別の機関として、公害対策会議(以下「会議」という。)を置く。

2 会議は、次に掲げる事務をつかさどる。

一 公害の防止に関する施策であって基本的かつ総合的なものの企画に関して審議し、及びその施策の実施を推進すること。

二 前号に掲げるもののほか、他の法令の規定によりその権限に属させられた事務

(組織等)
第四十六条 会議は、会長及び委員をもって組織する。

2 会長は、環境大臣をもって充てる。

3 委員は、内閣官房長官、関係行政機関の長、内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第九条第一項に規定する特命担当大臣及びデジタル大臣のうちから、環境大臣の申出により、内閣総理大臣が任命する。

4 会議に、幹事を置く。

5 幹事は、関係行政機関の職員のうちから、環境大臣が任命する。

6 幹事は、会議の所掌事務について、会長及び委員を助ける。

7 前各項に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

「中央環境審議会令」
内閣は、環境基本法 第四十二条第五項の規定に基づき、この政令を制定する。

 原因と結果の因果関係を被害者側に証明させるには、エコチル調査のような方法では時間や費用が掛かり過ぎます

裁判になった場合には、

結果としての被害者側の損害の程度や損害の継続期間の算定が困難、あるいは、

そもそも、人的被害も環境被害も金銭で補填できるような性格のものではない上、

原因と結果の因果関係を科学的に立証する方法論としても不可能に近いことなどから、

裁判になるような事態を避けるためにも、

環境に重大な影響を及ぼす恐れがある場合、予防原則を取り入れた規定を立法化する必要性がある、と判断できます。


現状の日本の法律体系は、

何か具体的事案が発生してしまった後に、

従うべき法律、規制・強制するような法律が施行されている状況です。

したがって、

何か重大な身体や健康危害が発生する前に予防する、という考え方の法律規定は存在しません。

また、発生してしまった後で事件を解決する方法ですので、

違法性の有無、過失責任主義(一部無過失責任主義)、証拠の立証、などが障害となり得るため、

事件解決には、かなりの労力を要することになります。
 

※過失責任主義について
日本の民法(709条)では、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」とあります。故意とは、わざとした行為のこと、過失とは、発生すると予想しそれを回避することができたのに避けなかったことを言います。


なお、少し論点がずれますが、

予防原則を取り入れた法律が成立すると、憲法の規定に違反する(=違憲)ことは無いのか、という懸念があります。

そこで、以下に違憲判決について記載いたします。

 

三権分立であり、民主主義でもある国、

日本では、

国会で成立した法律が、とりあえずは、憲法に優先して採用されます。

既に国会で成立し施行されている法律に従った行為は、基本的には違法性が問われないことになります。

公務員(自衛隊や警察官など)の皆さんが行う全ての行政業務は、全て法律に基づいて実施されます。

しかし、その法律が施行された後、

実際にその法律に従って、対応した行為について、

行為の違法性が問われた場合、

この時に初めて、その法律と憲法の整合性が問われることになります。

具体的には、

問題になった行為は、法律に従って実行したまでだとして、

その行為をさせた法律は、

はたして憲法に違反していないのかどうか、という問題が、

裁判所に訴訟という形式で問題提起されることになります。

実際に起こった事件について、実際に裁判に訴えられた後、最高裁判所が違憲について審理をした場合、

この時初めて、国会で成立した法律が、違憲判決を受けるかもしれない事態になるということです。

最近では、安保関連11法案が違憲かどうか、という問題になりましたが、

法律家にとっては、最高裁判所の判断を仰ぐまでもなく・・・という評価になるのでしょうが、

実際には、裁判で司法判決が出ないことには、違憲は確定できない、ということになります。

 

 かつてのドイツでは、

ワイマール憲法という世界で最も進歩的な憲法が施行されていましたが、

選挙で選出されたヒトラーの指導の下、

形式的には議論を経た議決で、

さまざまな憲法を否定するような法律が成立していき、

世界大戦へと進んでいった歴史があります。

したがって、

予防原則を法律に取り入れることと、

過去の歴史を振り返って、取り返しのつかない重大な被害者を出さないという価値と、

製造者側にとっての権利の制約(=予防原則を取り入れることによる憲法の規定にも関係する権利の制約)、

などを比較して検討した場合、何が優先されるべきなのか、よく考える必要があります。

 

戦争を予防するための戦力は、抑止力として働く場合は意味がありますが、戦争をしてしまっては意味がありません。

予防原則については、取り返しのつかない身体や健康への危害を出してしまっては意味がありません。

 

なお、「水環境保全のための廃水浄化とは?」のページに、

水質についてのみ、現時点のざっくりとした状況をご案内しています。

また、最近の国の考え方として、環境省令和4年版白書、経済産業省資料をご覧ください。

 まず、環境に関わる法律の最上位の法律が「環境基本法」です。規定している内容は、もっともな事項ばかりです。

現在の環境に関わるたくさんの法律は、全て、「環境基本法」の趣旨と合致する仕組みになっています。

ところで、「環境基本法」の施行に伴い廃止された法律があります。「公害対策基本法」という法律です。

「公害対策基本法」は、
日本の4大公害病である水俣病、第二水俣病(新潟水俣病)、四日市ぜんそく、イタイイタイ病の発生を受け制定された公害対策に関する日本の基本法。 1967年8月3日公布、同日施行。1993年11月19日、環境基本法施行に伴い統合され廃止された。


公害対策基本法(=廃止された法律)
(目的)
第一条 この法律は、事業者、国及び地方公共団体の公害の防止に関する責務を明らかにし、並びに公害の防止に関する施策の基本となる事項を定めることにより、公害対策の総合的推進を図り、もつて国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全することを目的とする。
2 前項に規定する生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする。

「環境基本法」には、上記の「生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにする」

というような類の条文は見当たりません。

「公害対策基本法」で規定されていた条文が、新しく成立した「環境基本法」では、削除されたのです。

環境基本法は、「環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進」することが目的の法律に進化したと言えます。

4大公害病の被害状況や司法判断などを踏まえ、法律は経済発展より環境保全を優先する方向に変わったと言えます。

したがって、環境基本法が施行された時から、予防原則を取り入れた法律を成立させる環境は整っていたと言えます。

立法化に必要な明文化すべき事項は、

①予防原則を採用し、国家による法律的拘束力を持たせるための要件
 身体や健康に対する危害、環境に重大な影響を及ぼす恐れなどだけでなく、
 新たな紛争も視野に入れ制度設計する必要があるため、事前協議や事前審査の制度を含め、
 かなり広い分野を対象にする必要があります。

②予防原則を採用させるための要件を満たしている場合の手続きの手順や審査機関などについての規定
法的拘束の内容(事前協議や事前審査の制度を含む)です。

予防原則を採用した法律条文による規制は、国家が広く経済活動の自由を制限する規定になりますが、

規制する段階では、当事者が経済活動を制限されたことによる損害は、規制時点では研究開発費レベルで、

生産を開始した場合の将来の利益は推定できません。

ただし、過去の日本で環境に重大な悪影響を与えた公害病などの実例に照らし合わせると、

下表に示されるように、経済活動を制限されることで推定される損害(額)よりも、

身体や健康危害によるさまざまな障害、損害、あるいは損害賠償額の方がはるかに高額という結論が出ています。

したがって、予防原則を適用して規制し、

経済活動を制限することによる損害よりも、予防効果が優先される、という考え方は、もはや一般的と言えます。

※公害防止にかかった費用と公害発生後にかかった費用の試算が各種機関から公表されています。
以下は水俣病の例です。

※環境省「水俣病の教訓と日本の水銀対策」(全64ページ)より抜粋
「リオサミット(環境と開発に関する国際連合会議)の直前である平成3(1991)年に行われた水俣湾周辺地域の水俣病の損害額と汚染防止対策費用を比較した研究結果を、以下に示します。
仮に今日、新しく計算を行えば、被害額はもっと大きくなるでしょう。」

以上のように、予防原則を採用した法律の必要性は、既に明らかなものとなっています。

また、安保関連11法案のように、法律家が違憲と評価するような法律が成立しています。

※安保関連法案の違憲性の評価について
日本は、海を隔てて、勝手に他国に侵略したロシア、専制国家の北朝鮮や中国と隣国です。
ロシアの行為は、過去の歴史を含め、多くの日本国民が目の当たりにし、再認識することになりました。
このような環境に置かれた日本は、安保関連法が違憲であるかどうか、という視点だけでなく、
立法された法律を違憲とするような憲法改正の必要性や具体的条文の立案についての検討、が必要です。
 

したがって、社会的要請がある予防原則を採用した法律の立法化は、それほど難しくないと思われます。

現状は、立法府あるいは行政府の不作為が指摘されるべき状況です。

 このテーマは、かなり難しい問題と思います。

ただ、対象となり得る物質を具体的に明確にした上で、適用要件を検討し、草案として、明文化する作業が必要です。

したがって、あくまでも検討事案として記載いたします。

とにかく、具体的物質を明確にして、具体的な事案について、予防原則を適用するケースを考える必要があります。

例えばですが、

既に流通している天然物質として、スギ・ヒノキ花粉症の原因となるスギ花粉・ヒノキ花粉、

(スギ・ヒノキ花粉症は、環境基本法(第2条第3項)の公害の定義に該当すると考えられます。)

既に流通している輸入合成化合物質として、アメリカ合衆国で賠償金支払い判決が出されているような除草剤成分、

日本でも、効果を発揮すべき耕作地以外の水域などでも一定期間その農薬の性質を維持し続け、

人以外の生物へ悪影響を及ぼすだけでなく、

人の身体や健康危害に及んでいると推定されるネオニコチノイド系農薬など、

例えば、流通していなかったらと仮定し、具体的対象物質として、題材になるのではないでしょうか。

 このページでは、化学合成物質を対象に予防原則を取り上げています。

ただ、予防原則という考え方は、化学物質だけに限らず、あらゆる分野で類似の状況があります。

また、類似ではありませんが、「無過失責任」という考え方に通じる部分もあります。

※無過失責任が問われる法律の例示
①「水質汚濁防止法
第四章 損害賠償
(無過失責任)
第十九条
工場又は事業場における事業活動に伴う有害物質の汚水又は廃液に含まれた状態での排出又は地下への浸透により、人の生命又は身体を害したときは、当該排出又は地下への浸透に係る事業者は、これによつて生じた損害を賠償する責めに任ずる
2 一の物質が新たに有害物質となつた場合には、前項の規定は、その物質が有害物質となつた日以後の当該物質の汚水又は廃液に含まれた状態での排出又は地下への浸透による損害について適用する。

②「鉱業法
第六章 鉱害の賠償
第一節 賠償義務
(賠償義務)
第百九条 鉱物の掘採のための土地の掘さく、坑水若しくは廃水の放流、捨石若しくは鉱さいのたい積又は鉱煙の排出によつて他人に損害を与えたときは、損害の発生の時における当該鉱区の鉱業権者(当該鉱区に租鉱権が設定されているときは、その租鉱区については、当該租鉱権者)が、損害の発生の時既に鉱業権が消滅しているときは、鉱業権の消滅の時における当該鉱区の鉱業権者(鉱業権の消滅の時に当該鉱業権に租鉱権が設定されていたときは、その租鉱区については、当該租鉱権者)が、その損害を賠償する責に任ずる

③「国家賠償法
第二条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる
 「日本国憲法」
  第十七条 何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、
       国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

④「製造物責任法
(製造物責任)
第三条 製造業者等は、その製造、加工、輸入又は前条第三項第二号若しくは第三号の氏名等の表示をした製造物であって、その引き渡したものの欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる
 

以下に予防原則の類似例を掲示します。

犯罪行為は、犯罪の定義が法令で定められ、構成要件を満たして起訴されれば、裁判を経て、処罰されます。

予防原則は、何らかの違法行為が実行される前に、何らかの規制をするという法制度の実現可能性の考察です。

①「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(配偶者暴力防止法)による、接近禁止命令、電話等禁止命令、子への接近禁止命令、親族等への接近禁止命令、退去命令、

②「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律」(AV出演被害防止・救済法)、

③敵基地攻撃能力、

④「法人等による寄付の不当な勧誘の防止等に関する法律案」(世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の問題で、被害者救済のための新法)、

⑤飲食店の従業員による厨房内での不衛生行為、飲食店利用者による店舗内での不衛生行為などの動画撮影配信、

など。

 予防原則を法制度化する場合、適用範囲は広く、いずれの場合であっても、人権や利益関係が複雑に関係します。

したがって、基本法を幹とするような法体系を構築する必要性があるのかもしれません。

制度の概要は、

予想される被害の原因と予想される損失の結果については、相当因果関係をもって挙証責任を認定し、

予想の段階で禁止する行為の責任は、身体や健康危害を未然に防止すると同等の高度の注意義務を基準として認定し、

行政運営上の事務処理については、法令での保護の例外として、

予想の段階で禁止しない行政(官)に対し、特例として、厳しい判断基準を設けて、厳罰する明文規定を立法化する

という内容です。

法律として明文化する場合は、

公共の福祉に反しない範囲で

上述の環境省「水俣病の教訓と日本の水銀対策」の事例のように、

最終的には利益衡量(比較衡量)を詳細に勘案して、法律の適用要件を明文化する必要があります

さらに、

立法化に当たっては、社会的要請がある法制度ですので、立法後の違憲判決を恐れることなく、

法律家のみならず、具体的な案件関係者も議論に参加し、条文を作成する必要があります。

禁止行為を具体的に明文化する作業は、本来は、立法府の国会議員に課せられた最も重要な責務です。

 「農薬取締法」は、

農薬について登録制度を設け、

販売及び使用の規制等を行うことにより、

農薬の安全性その他の品質及びその安全かつ適正な使用の確保を図り、

これらにより、農業生産の安定と国民の健康の保護に資するとともに、国民の生活環境の保全に寄与する、

ことを目的としています。

「農薬の登録申請において提出すべき資料」は、かなり詳細に規定されています。

 「農薬取締法」では、

すでに、法令の中に「予防原則」の評価基準を取り入れられる条文規定が整っています

具体的には、

「農薬取締法」第四条第一項第六号から第九号までの条文が該当し、

「被害を生ずるおそれがあるとき」あるいは、

「被害が発生し、かつ、その被害が著しいものとなるおそれがあるとき」に該当するときは、

農薬の「登録を拒否しなければならない。」(同第4条)としています。

さらに、

①過去の公害訴訟の判決(=司法判断)の評価基準、

②予防原則に基づく禁止行為が実行された場合、過去の公害病の実例から予想される損害額と被害額の利益衡量、

③「環境基本法」に明確化された環境保全についての趣旨の変遷、

なども予防原則の採用を後押ししており、

予防原則による評価基準を実行することで、違憲判決につながるような危惧も解消されているように思われます。
 

以下に関係する条文を転載します。

「農薬取締法」
(登録の拒否)
第四条 農林水産大臣は、前条第四項の審査の結果、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、同条第一項の登録を拒否しなければならない

一 提出された書類の記載事項に虚偽の事実があるとき。

二 特定試験成績が基準適合試験によるものでないとき。

三 当該農薬の薬効がないと認められるとき。

四 前条第二項第三号に掲げる事項についての申請書の記載に従い当該農薬を使用する場合に農作物等に害があるとき。

 当該農薬を使用するときは、使用に際し、前条第二項第四号の被害防止方法を講じた場合においてもなお人畜被害を生ずるおそれがあるとき。

 前条第二項第三号に掲げる事項についての申請書の記載に従い当該農薬を使用する場合に、その使用に係る農作物等への当該農薬の成分(その成分が化学的に変化して生成したものを含む。次号において同じ。)の残留の程度からみて、当該農作物等又は当該農作物等を家畜の飼料の用に供して生産される畜産物の利用が原因となって被害を生ずるおそれがあるとき。

 前条第二項第三号に掲げる事項についての申請書の記載に従い当該農薬を使用する場合に、その使用に係る農地等の土壌への当該農薬の成分の残留の程度からみて、当該農地等において栽培される農作物等又は当該農作物等を家畜の飼料の用に供して生産される畜産物の利用が原因となって被害を生ずるおそれがあるとき。

 当該種類の農薬が、その相当の普及状態の下に前条第二項第三号に掲げる事項についての申請書の記載に従い一般的に使用されるとした場合に、その生活環境動植物に対する毒性の強さ及びその毒性の相当日数にわたる持続性からみて、多くの場合、その使用に伴うと認められる生活環境動植物の被害が発生し、かつ、その被害が著しいものとなるおそれがあるとき。

 当該種類の農薬が、その相当の普及状態の下に前条第二項第三号に掲げる事項についての申請書の記載に従い一般的に使用されるとした場合に、多くの場合、その使用に伴うと認められる公共用水域(水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する公共用水域をいう。第二十六条において同じ。)の水質の汚濁が生じ、かつ、その汚濁に係る水(その汚濁により汚染される水産動植物を含む。同条において同じ。)の利用が原因となって人畜被害を生ずるおそれがあるとき。

十 当該農薬の名称が、その主成分又は効果について誤解を生ずるおそれがあるものであるとき。

十一 前各号に掲げるもののほか、農作物等、人畜又は生活環境動植物に害を及ぼすおそれがある場合として農林水産省令・環境省令で定める場合に該当するとき。

2 前項第五号に掲げる場合に該当するかどうかの基準は、農林水産大臣が定めて告示する。

3 第一項第六号から第九号までのいずれかに掲げる場合に該当するかどうかの基準は、環境大臣が定めて告示する。
 

さらに、「農薬取締法」第四条第三項で、

「第一項第六号から第九号までのいずれかに掲げる場合に該当するかどうかの基準は、環境大臣が定めて告示する。」

と規定されていますので、

現在の法令の条文のままで、改正する必要もなく、

環境省の告示に「予防原則」を取り入れた規定を明文化するだけで済みます
 

なお、第四条第一項第八号が、「水域の生活環境動植物の被害防止に係る農薬登録基準」に該当します。

「水域の生活環境動植物の被害防止に係る農薬登録基準」は、極めて低い濃度が、基準値として設定されています。

※名称の変遷
水域の生活環境動植物の被害防止に係る農薬登録基準(現在)
水産動植物の被害防止に係る農薬登録基準(令和2年4月1日以前)、
水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準(平成30年12月1日以前)

「水域の生活環境動植物の被害防止に係る農薬登録基準」は、

以下の意見募集の結果、整理された方法を踏まえ実施している、としています。

「生活環境動植物に係る農薬登録基準の設定について(第一次とりまとめ)(案)

に対する意見募集の実施結果について」全17ページには、環境省の考え方が記載されています。

農薬の有効成分が、人体へ及ぼす影響の指標については、「ADI」と「ARfD」を基準にして、評価しています。

具体的には、

「水質汚濁に係る農薬登録基準」が、該当します。

ADI、ARfDともに、複数の動物実験の最小数値から、さらに安全を見込んで1/100を設定しています。

※ADI:Acceptable Daily Intake:許容一日摂取量
農薬を食品等から毎日摂取してもADIを超過しなければ健康への悪影響は考えられない、としています。

※ARfD:Acute Reference Dose:急性参照用量
人が農薬を短時間(24時間以内)に摂取しても、健康への悪影響がないと推定される摂取量(mg/kg体重)の上限、としています。

したがって、

「農薬取締法」では、

すでに、予防原則を取り入れた法令による仕組みに変えることができるにもかかわらず、

農薬の登録を拒否しなければならない場合、

新規登録の際には、規定された方法で農薬が使用されていることを前提条件にしていたり、

登録済み農薬の再評価の際には、規定された方法で農薬が使用されていることを推定する前提で再評価したり、

さらに、登録済み農薬の再評価の期間を「15年毎」と制約していたり、しています。

したがって、

現実には、「予防原則」を取り入れていない状況になっています。

この現状を進化させるためには、

立法府の責任で、

下記のような明文化された条文規定を取り入れた法令を立法化する必要があります。

内容は、非常に厳しいですが、

歴史に基づき、過去の過ちを繰り返さないため

「予防原則」を採り入れることは

終局的には行政(官)・民間事業者・研究機関・国民、その他いずれの関係者にも幸福をもたらします


繰り返しになりますが、

予想される被害の原因と予想される損失の結果については、相当因果関係をもって挙証責任を認定し、

予想の段階で禁止する行為の責任は、身体や健康危害を未然に防止すると同等の高度の注意義務を基準として認定し

行政運営上の事務処理については、法令での保護の例外として、

予想の段階で禁止しない行政(官)に対し、特例として、厳格な評価基準を設けて厳罰する明文規定を立法化する。

必要があります。


「農薬登録基準」には、次のような問題があります。

①耕作地での農薬の使用方法に問題があった場合でも、各号の基準値が超過した場合に農薬の登録を拒否できるのか、
 →法令上、明文規定が無いため、使用方法に問題があっただけでは、農薬登録拒否の対象外、と評価しています。
  製造業者や輸入業者に対する登録拒否や販売業者に対する販売禁止の行政処分とは別の考え方になっています。

②農薬の登録について、再評価の制度を設けており、登録済みの農薬について、簡単に登録拒否する想定があるのか、
 →法令上、“いつでも”ではなく、「農林水産省令で定める期間(=15年)ごとに行う」とされています。

など、環境に取り返しがつかないような重大な悪影響を及ぼす恐れを想定すれば、不適切と考えられます。


再度、「農薬取締法」の関係する条文を掲載します。

「農薬取締法」(以下、部分的に抜粋して記載)
(農薬の登録)
第三条 製造者又は輸入者は、農薬について、農林水産大臣の登録を受けなければ、これを製造し若しくは加工し、又は輸入してはならない。(以下省略)
2 前項の登録の申請は、次に掲げる事項を記載した申請書及び農薬の安全性その他の品質に関する試験成績を記載した書類その他第四項の審査のために必要なものとして農林水産省令で定める資料を提出して、これをしなければならない。この場合において、試験成績のうち農林水産省令で定めるもの(以下「特定試験成績」という。)は、その信頼性を確保するために必要なものとして農林水産省令で定める基準に従って行われる試験(以下「基準適合試験」という。)によるものでなければならない。

 農薬の種類、名称、物理的化学的性状並びに有効成分とその他の成分との別にその各成分の種類及び含有濃度(第十一号に掲げる事項を除く。)

 適用病害虫の範囲(農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる薬剤にあっては、適用農作物等の範囲及び使用目的。以下同じ。)、使用方法及び使用期限

 人畜に有毒な農薬については、その旨、使用に際して講ずべき被害防止方法及び解毒方法

五 生活環境動植物に有毒な農薬については、その旨

十一 農薬原体の有効成分以外の成分の種類及び含有濃度

4 農林水産大臣は、第一項の登録の申請を受けたときは、最新の科学的知見に基づき、第二項の申請書及び資料に基づく当該申請に係る農薬の安全性その他の品質に関する審査を行うものとする。

6 農林水産大臣は、第一項の登録の申請に係る農薬が、病害虫の防除若しくは農作物等の生理機能の増進若しくは抑制において特に必要性が高いもの又は適用病害虫の範囲及び使用方法が類似する他の農薬と比較して特に安全性が高いものと認めるときは、当該申請に係る農薬についての第四項の審査を、他の農薬の審査に優先して行うように努めるものとする。

7 第四項の審査の実施に関して必要な事項は、農林水産省令で定める。

(登録の拒否)
第四条 農林水産大臣は、前条第四項の審査の結果、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、同条第一項の登録を拒否しなければならない
一 提出された書類の記載事項に虚偽の事実があるとき。

二 特定試験成績が基準適合試験によるものでないとき。

四 前条第二項第三号に掲げる事項についての申請書の記載に従い当該農薬を使用する場合に農作物等に害があるとき。

五 当該農薬を使用するときは、使用に際し、前条第二項第四号の被害防止方法を講じた場合においてもなお人畜に被害を生ずるおそれがあるとき。

六 前条第二項第三号に掲げる事項についての申請書の記載に従い当該農薬を使用する場合に、その使用に係る農作物等への当該農薬の成分(その成分が化学的に変化して生成したものを含む。次号において同じ。)の残留の程度からみて、当該農作物等又は当該農作物等を家畜の飼料の用に供して生産される畜産物の利用が原因となって人に被害を生ずるおそれがあるとき。

七 前条第二項第三号に掲げる事項についての申請書の記載に従い当該農薬を使用する場合に、その使用に係る農地等の土壌への当該農薬の成分の残留の程度からみて、当該農地等において栽培される農作物等又は当該農作物等を家畜の飼料の用に供して生産される畜産物の利用が原因となって人に被害を生ずるおそれがあるとき。

 当該種類の農薬が、その相当の普及状態の下に前条第二項第三号に掲げる事項についての申請書の記載に従い一般的に使用されるとした場合に、その生活環境動植物に対する毒性の強さ及びその毒性の相当日数にわたる持続性からみて、多くの場合、その使用に伴うと認められる生活環境動植物の被害が発生し、かつ、その被害が著しいものとなるおそれがあるとき。

 当該種類の農薬が、その相当の普及状態の下に前条第二項第三号に掲げる事項についての申請書の記載に従い一般的に使用されるとした場合に、多くの場合、その使用に伴うと認められる公共用水域(水質汚濁防止法(昭和四十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する公共用水域をいう。第二十六条において同じ。)の水質の汚濁が生じ、かつ、その汚濁に係る水(その汚濁により汚染される水産動植物を含む。同条において同じ。)の利用が原因となって人畜に被害を生ずるおそれがあるとき。

十一 前各号に掲げるもののほか、農作物等、人畜又は生活環境動植物に害を及ぼすおそれがある場合として農林水産省令・環境省令で定める場合に該当するとき。

2 前項第五号に掲げる場合に該当するかどうかの基準は、農林水産大臣が定めて告示する。

3 第一項第六号から第九号までのいずれかに掲げる場合に該当するかどうかの基準は、環境大臣が定めて告示する

(再評価)
第八条 第三条第一項の登録を受けた者は、農林水産大臣が農薬の範囲を指定して再評価を受けるべき旨を公示したときは、当該指定に係る農薬について、農林水産大臣の再評価を受けなければならない。

2 前項の規定による再評価(以下この条において単に「再評価」という。)は、同一の有効成分を含む農薬について、農林水産大臣が初めて当該有効成分を含む農薬に係る第三条第一項又は第三十四条第一項の登録をした日から起算して農林水産省令で定める期間ごとに行うものとする。

3 第一項の公示においては、再評価を受けるべき者が提出すべき農薬の安全性その他の品質に関する試験成績を記載した書類その他の資料及びその提出期限を併せて公示するものとする。この場合において、特定試験成績は、基準適合試験によるものでなければならない。

4 農林水産大臣は、再評価においては、最新の科学的知見に基づき、前項の資料に基づく第一項の指定に係る農薬の安全性その他の品質に関する審査を行うものとする。

5 農林水産大臣は、センターに、前項の審査に関する業務の一部を行わせることができる。

6 第四項の審査の実施関して必要な事項は、農林水産省令で定める

7 再評価を受けようとする者は、農林水産大臣に、第三項の提出期限までに、同項の資料を提出するとともに実費を勘案して政令で定める額の手数料を納付しなければならない。

(再評価等に基づく変更の登録及び登録の取消し)
第九条 農林水産大臣は、前条第三項の提出期限までに同項の資料の提出又は同条第七項の手数料の納付がなかったときは、当該農薬につき、その登録を取り消すことができる。

2 農林水産大臣は、前条第四項の審査の結果第四条第一項各号のいずれかに該当すると認めるときは、当該農薬の安全性その他の品質の確保に必要な限度において、当該農薬につき、その登録に係る第三条第二項第三号、第四号(被害防止方法に係る部分に限る。)若しくは第十一号に掲げる事項を変更する登録をし、又はその登録を取り消すことができる

3 農林水産大臣は、前項に規定する場合のほか、現に登録を受けている農薬が、その登録に係る第三条第二項第三号及び第四号(被害防止方法に係る部分に限る。)に掲げる事項を遵守して使用されるとた場合においてもなおその使用に伴って第四条第一項第四号から第九号まで又は第十一号のいずれかに規定する事態が生ずると認められるに至った場合において、これらの事態の発生を防止するため必要があるときは、その必要の範囲内において、当該農薬につき、その登録に係る第三条第二項第三号、第四号(被害防止方法に係る部分に限る。)若しくは第十一号に掲げる事項を変更する登録をし、又はその登録を取り消すことができる

4 農林水産大臣は、前三項の規定により変更の登録をし、又は登録を取り消したときは、遅滞なく、当該処分の相手方に対し、その旨及び理由を通知し、かつ、変更の登録の場合にあっては、変更後の第三条第二項第三号、第四号(被害防止方法に係る部分に限る。)又は第十一号に掲げる事項を記載した登録票を交付しなければならない。

5 農林水産大臣は、第一項から第三項までの規定による処分についての審査請求がされたときは、その審査請求がされた日(行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)第二十三条の規定により不備を補正すべきことを命じた場合にあっては、当該不備が補正された日)から二月以内にこれについて裁決をしなければならない。

水質汚濁性農薬の指定等に伴う変更の登録)
第十条 農林水産大臣は、第二十六条第一項の規定により水質汚濁性農薬の指定があり、又はその指定の解除があったときは、現に登録を受けている農薬で、その指定又は指定の解除に伴い水質汚濁性農薬に該当し、又は該当しないこととなったものにつき、遅滞なく、その旨の変更の登録をしなければならない。

2 農林水産大臣は、前項の規定により変更の登録をしたときは、遅滞なく、当該農薬に係る第三条第一項の登録を受けている者に対し、その旨を通知し、かつ、変更後の同条第九項第三号に掲げる事項を記載した登録票を交付しなければならない。

(水質汚濁性農薬の使用の規制)
第二十六条 政府は、政令で、次に掲げる要件の全てを備える種類の農薬を水質汚濁性農薬として指定する。

一 当該種類の農薬が相当広範な地域においてまとまって使用されているか、又は当該種類の農薬の普及の状況からみて近くその状態に達する見込みが確実であること。

二 当該種類の農薬が相当広範な地域においてまとまって使用されるときは、一定の気象条件、地理的条件その他の自然的条件の下では、その使用に伴うと認められる公共用水域の水質の汚濁が生じ、その汚濁による生活環境動植物の被害が発生し、かつ、その被害が著しいものとなるおそれがあるか、又はその汚濁に係る水の利用が原因となって人畜に被害を生ずるおそれがあるかのいずれかであること。

2 都道府県知事は、前項の規定により指定された水質汚濁性農薬(以下単に「水質汚濁性農薬」という。)に該当する農薬につき、当該都道府県の区域内における当該農薬の使用の見込み、その区域における自然的条件その他の条件を勘案して、その区域内におけるその使用に伴うと認められる公共用水域の水質の汚濁が生じ、その汚濁による生活環境動植物の被害が発生し、かつ、その被害が著しいものとなるおそれがあるか、又はその汚濁に係る水の利用が原因となって人畜に被害を生ずるおそれがあるときは、政令で定めるところにより、これらの事態の発生を防止するため必要な範囲内において、規則で地域を限り、当該農薬の使用につきあらかじめ都道府県知事の許可を受けるべき旨(国の機関が行う当該農薬の使用については、あらかじめ都道府県知事に協議すべき旨)を定めることができる

第五章 監督
(報告及び検査)
第二十九条 農林水産大臣又は環境大臣は製造者、輸入者、販売者若しくは農薬使用者若しくは除草剤販売者又は農薬原体を製造する者その他の関係者に対し、都道府県知事は販売者に対し、第三条第一項、第四条第一項、第七条第八項、第九条第二項及び第三項、第十条第一項、第十六条、第十八条第一項及び第二項、第十九条、第二十一条、第二十三条、第二十四条、第二十五条第三項、第二十六条第一項並びに第三十一条第一項及び第二項の規定の施行に必要な限度において、農薬の製造、加工、輸入、販売若しくは使用若しくは除草剤の販売若しくは農薬原体の製造その他の事項に関し報告を命じ、又はその職員にこれらの者から検査のため必要な数量の農薬若しくはその原料若しくは除草剤を集取させ、若しくは必要な場所に立ち入り、農薬の製造、加工、輸入、販売若しくは使用若しくは除草剤の販売若しくは農薬原体の製造その他の事項の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。ただし、農薬若しくはその原料又は除草剤を集取させるときは、時価によってその対価を支払わなければならない。

2 都道府県知事は、農林水産省令・環境省令で定めるところにより、前項の規定により得た報告又は検査の結果を農林水産大臣又は環境大臣に報告しなければならない。

3 第一項に定めるもののほか、農林水産大臣又は環境大臣は製造者、輸入者若しくは農薬使用者若しくは除草剤販売者又は農薬原体を製造する者その他の関係者に対し、都道府県知事は販売者又は水質汚濁性農薬の使用者に対し、この法律を施行するため必要があると認めるときは、農薬の製造、加工、輸入、販売若しくは使用若しくは除草剤の販売若しくは農薬原体の製造その他の事項に関し報告を命じ、又はその職員にこれらの者から検査のため必要な数量の農薬若しくはその原料若しくは除草剤を集取させ、若しくは必要な場所に立ち入り、農薬の製造、加工、輸入、販売若しくは使用若しくは除草剤の販売若しくは農薬原体の製造その他の事項の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。ただし、農薬若しくはその原料又は除草剤を集取させるときは、時価によってその対価を支払わなければならない。

4 第一項又は前項の場合において、第一項又は前項に掲げる者から要求があったときは、第一項又は前項の規定により集取又は立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を示さなければならない。

5 第一項及び第三項の規定による集取及び立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない

(センターによる検査)→第三条第5項 独立行政法人農林水産消費安全技術センター
第三十条 農林水産大臣は、前条第一項の場合において必要があると認めるときは、センターに、製造者、輸入者、販売者若しくは農薬使用者又は農薬原体を製造する者その他の関係者から検査のため必要な数量の農薬若しくはその原料を集取させ、又は必要な場所に立ち入り、農薬の製造、加工、輸入、販売若しくは使用若しくは農薬原体の製造その他の事項の状況若しくは帳簿、書類その他必要な物件を検査させることができる。ただし、農薬又はその原料を集取させるときは、時価によってその対価を支払わなければならない。

2 農林水産大臣は、前項の規定によりセンターに集取又は立入検査を行わせる場合には、センターに対し、当該集取又は立入検査の期日、場所その他必要な事項を示してこれを実施すべきことを指示するものとする。

3 センターは、前項の指示に従って第一項の集取又は立入検査を行ったときは、農林水産省令で定めるところにより、同項の規定により得た検査の結果を農林水産大臣に報告しなければならない。

4 前条第四項及び第五項の規定は、第一項の規定による集取又は立入検査について準用する。

(監督処分)
第三十一条 農林水産大臣は、製造者又は輸入者がこの法律の規定に違反したときは、これらの者に対し、農薬の販売を制限し、若しくは禁止し、又はその製造者若しくは輸入者に係る第三条第一項の規定による登録を取り消すことができる。

2 農林水産大臣は、販売者が第十八条第一項若しくは第二項、第十九条又は第二十一条第一項の規定に違反したときは、当該販売者に対し、農薬の販売を制限し、又は禁止することができる。

3 農林水産大臣は、その定める検査方法に従い、センターに農薬を検査させた結果、農薬の品質、包装等が不良となったため、農作物等、人畜又は生活環境動植物に害があると認められるときは、当該農薬の販売又は使用を制限し、又は禁止することができる。

4 都道府県知事は、販売者がこの法律の規定(第十八条第一項及び第二項、第十九条並びに第二十一条第一項の規定を除く。)に違反したときは、当該販売者に対し、農薬の販売を制限し、又は禁止することができる。

(聴聞の方法の特例)
第三十二条 前条第一項の規定による登録の取消しに係る聴聞の期日における審理は、公開により行わなければならない。

(登録の制限)
第三十三条 第三十一条第一項の規定により登録を取り消された者は、取消しの日から一年間は、当該農薬について更に登録を受けることができない。

 「農薬取締法」の条文規定では、

環境への悪影響が著しいおそれ(=第4条第1項第8号

人畜へのいかなる程度の被害のおそれ(=同条同項第9号)、

が認められれば

農薬の登録を拒否できる制度が、

言い換えると、「予防原則」を取り入れられる制度が、既に整っています。

しかし、現実には、農薬の登録を拒否するためのハードルは非常に高いものになっています。

上記2つのおそれを指摘している文献は多くあり、ここでは動画へのリンクを貼り付けます。

農薬の登録を拒否するためのハードルは非常に高い原因は、

上述のように「水農薬登録基準」を基にした評価の仕方にあります。

では、「農薬登録基準」の考え方は、詳しくはどのような内容なのでしょうか。

基礎となる考え方については、国立研究開発法人農業環境技術研究所が、90ページの解説書で詳しく解説しています。

 これによると、

先進諸国では、統計学的な手法を活用して毒性評価や環境中濃度の予測の課題に対応するため、

定量的かつ信頼性の高い高度評価手法が検討され、リスク管理施策への活用が進められている。

そして、

種の感受性分布という概念を用いて生物多様性への影響を評価することが有効であるとしている、としています。

問題は、

種の感受性分布(Species Sensitivity Distribution, SSD)は、

95%の種を保護する濃度、5%の種が影響を受ける濃度(HC5)を逆推定し、

HC5 がおおむね安全側に立った評価となっていることが確認されている、としている点です。

最終的に、

PEC<AECであるときリスクは懸念レベル未満であるので農薬として登録可能と判定されます。

※PEC=(河川などの水の)環境中予測濃度(Predicted Environmental Concentration)
水田使用農薬の水質濃度の推定方法は3段階とし、第1段階は数値計算(=投与した農薬が一定割合で溶解するという試算)による算定、第2段階は水質汚濁性試験等のデータ(=模擬水田での生分解・土壌吸着などを含めた試験結果)を用いることとし、第3段階では実際に水田圃場での試験データを用います。

非水田使用農薬に関しては2段階とし、第1段階は数値計算による算定、第2段階では地表流出試験等のデータを用います。これらの段階制試験は、より高次の段階の試験を要しない(=各段階でAECと比較し、AECを下回る場合は次の段階の予測をしない)ためのスクリーニング試験です。

※AEC急性影響濃度(Acutre Effect Concentration)
水産生物が、ある化学物質によって短期間の暴露で影響を受けると評価される最小濃度のこと。
魚類(メダカ又はコイ)は96時間後の急性半数致死濃度、ミジンコ(オオミジンコ)は48時間後の急性遊泳阻害濃度、 藻類(緑藻Pseudokirchneriella subcapitata)は72時間後半数生長阻害濃度、の急性毒性試験結果による LC50(半数致死濃度)もしくは EC50(半数影響濃度)をそれぞれの不確実性係数魚類と甲殻類は 10、藻類は 1)で除したものの最小値を採用します。

問題点を詳しく説明しますと、

農薬の登録を拒否する基準として、試験対象生物の5%の被害は、織り込み済み、しかも、

その基準値については、さらに、安全(=不確実係数)を見て、魚類と甲殻類は 、1/10の濃度にしている、

したがって、リスクは懸念レベル未満であるので農薬として登録“可能”と判定、している点です。

どういうことかというと、

「農薬取締法」の

第4条第1項第8号「生活環境動植物の被害が発生し、かつ、その被害が著しいものとなるおそれ」や

同条同項第9号「公共用水域の水質の汚濁が生じ、かつ、

その汚濁に係る水の汚濁により汚染される水産動植物の利用が原因となって人畜に被害を生ずるおそれ」が、

確率論的には、“おそれ”が0.5%程度残っていても仕方がない、と容認している、というところです。

なお、「農薬取締法」第4条第1項第9号の基準濃度を軽視する傾向があります。
しかし、水俣病の場合、生きた魚を摂取して、人に甚大な健康被害が発生した実例があります。

事実上、不幸にして、0.5%に入ってしまった場合、悪影響への保障が無いのは仕方がないという行政運営です。

この0.5%とは、一定の個体差、とも考えることが出来ます

似た事例として、新型コロナワクチン接種があります。

感染によるリスク(国民の多数の致死や感染による各種障害)よりも、

国民の大多数が接種することで、一定の個体差によって、一部の方が不幸(致死や後遺症障害)になる前提で、

国は、新型コロナワクチン接種を推奨して進めました。

いずれも定量的な評価が判断基準になっていますが、

国が推奨する制度に従った結果(相当因果関係が推定される致死や後遺症障害)ですので、

予想される少数の不幸な被害者(相当因果関係が推定される致死や後遺症障害)を救済する制度が必要です。

ふたつの事例で少し異なる点は、

“おそれ”がある農薬の登録を拒否したとしても、

①他国では使用を禁止している実例が既に有り得ること、

②その農薬が登録(≒使用)できなくても、対策として、より健全な新たな発意の可能性がある、ということです。

※農林水産省「輸出相手国の残留農薬基準に対応した病害虫防除マニュアル」
我が国の通常の防除体系で使用される農薬の中には、輸出相手国で当該農薬の対象作物が生産されていないことから、当該農薬の登録が行われていないこと等の理由により、輸出相手国の残留農薬基準値が我が国の基準に比べて極めて低いものが存在し、結果として輸出向けの農産物に使用可能な農薬が限定されています。こうした状況の下、農林水産省では、農産物の輸出促進を図るため、平成26年度から平成28年度に、輸出重点品目について、輸出相手国での残留農薬基準値が設定されていない農薬等の使用を低減する新たな防除体系を確立し、その効果の提示を行いつつ産地へ導入することを目的とした「農産物輸出促進のための新たな防除対英の確立・導入事業」を実施しました。

その他には、

脳の機能に関わる神経障害などの悪影響の「おそれ」については、多くの指摘があり、

「浸透性農薬〈ネオニコチノイド〉はヒトにとって安全か?」の動画でもご紹介しました。

環境に取り返しがつかないような重大な影響を及ぼす恐れがある場合、

予想される被害の原因と損失の結果について、司法判断では、相当因果関係をもって挙証責任を認定する時代ですが、

農薬毒性試験の項目としては、直接の因果関係が証明されていないなどとして、含めていません。

さらに、

耕作地で農薬使用方法(量や回数)が不適切でも、各号の基準値が超過した場合に農薬の登録を拒否できるのか、

  →法令上、明文規定が無いため、
   耕作地での使用者による使用方法の問題(=過失行為による過多)だけでは、農薬登録拒否の対象外
です。
   製造業者や輸入業者に対する登録拒否や販売業者に対する販売禁止の行政処分とは別の考え方です。
   ただし、環境への悪影響が著しいおそれ(=第8号)、あるいは、
   人畜へのいかなる程度の被害のおそれ(=第9号)、
   が認められれば、
本来は、農薬として使用できない事案ですので、
   「廃水浄化処理の原則」に従い、廃水は、「出した場所で浄化処理し自然界へ戻す」規制が必要です。
   現行法制度では、
   個々の耕作地は、本来は、事業場としての性格もありますので、
   排水規制の対象であってもおかしくないはずですが、
   特定施設(=「水質汚濁防止法施行令(内閣の政令)別表第一」に示す施設)に該当しないため、
   あるいは   
   1日当たりの排水量の基準などから、
   排水規制の対象外です。
   しかし、
   農業従事者が、農薬を散布することで得られる利益と、
   環境への悪影響が著しいおそれ、あるいは、人畜へのいかなる程度の被害のおそれ、を比較し、
   農薬登録の拒否をしないのであれば、
   農薬については、耕作地からの排水路について、排水規制の対象にする検討が必要、とも考えられます。

農薬の登録について、再評価の制度を設けており、登録済みの農薬について、簡単に登録拒否する想定があるのか、

  →“いつでも”登録拒否できるではなく「農林水産省令で定める期間(=15年)ごとに行う」とされています。

 

 物事を評価し、判断するためには、

主観的でなく客観的に、印象などの定性的な評価でなく数値化して、定量的な基準を設けて判断する必要があります。

したがって、上記のような手法は、

さまざまな評価・判断の基準として、当然のこととして、一般的に採用されていると思います。


しかし、

環境に取り返しがつかないような重大な悪影響を及ぼすおそれが想定される事案について、採用できるでしょうか。
 

過去のいくつかの事例を挙げます。

約50年前に示された「四大公害訴訟」の判決での司法判断は、

汚染物質や有害物質などの排出者側の原因と被害者側の結果については、相当因果関係をもって挙証責任を認定し、

同じく排出者側の責任については、身体や健康危害を未然に防止する高度の注意義務を基準として認定し、

汚染物質や有害物質などの排出者側に対して、非常に厳しい判断基準を示しています。

「カネミ油症」事件では、「カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進に関する法律」が制定され、

同法に基づく「カネミ油症患者に関する施策の推進に関する基本的な指針」に基づき、

国は、同居家族で健康被害を受けた者が、家族内で認定結果が分かれないよう、診断基準を拡大で見直し。

「環境基本法」に関して、

現在の環境に関わるたくさんの法律は、全て、「環境基本法」の趣旨と合致する仕組みになっています。

ところで、「環境基本法」の施行に伴い廃止された法律があります。「公害対策基本法」という法律です。

※「公害対策基本法」について
日本の4大公害病である水俣病、第二水俣病(新潟水俣病)、四日市ぜんそく、イタイイタイ病の発生を受け制定された公害対策に関する日本の基本法。 1967年8月3日公布、同日施行。1993年11月19日、環境基本法施行に伴い統合され廃止された。

公害対策基本法(=廃止された法律)
(目的)
第一条 この法律は、事業者、国及び地方公共団体の公害の防止に関する責務を明らかにし、並びに公害の防止に関する施策の基本となる事項を定めることにより、公害対策の総合的推進を図り、もつて国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全することを目的とする。

2 前項に規定する生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにするものとする

新たに施行された法律、「環境基本法」には、

上記の「生活環境の保全については、経済の健全な発展との調和が図られるようにする」

というような類の条文は見当たりません。

「公害対策基本法」で規定されていた条文が、新しく成立した「環境基本法」では、削除されたのです。

環境基本法は、「環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進」することが目的の法律に進化したと言えます。

4大公害病の被害状況や司法判断などを踏まえ、

法律は、経済発展より環境保全を優先する方向に変わったと言えます。

あるいは、歴史に学んで、経済発展についての評価基準が見直された、というべきかもしれません。

考え方の方向性は、財政政策・金融政策など、行政運営の本質にも合致しており、国策として何ら矛盾はありません。


このページの「リスク分析の評価基準について」の項で記載しましたが、

そもそも、国が評価をする目的や考え方が適切であるかどうか、もっと探究する必要があるように思われます。

 日本は、法の支配を受ける、自由民主主義国家、先進諸国の一員のはずです。

世間では、

「日本では欧米で禁止された農薬でも使われている。」ような、

あるいは、「日本は、農薬の使用量が世界各国の中でも多い。」ような、

あるいは「日本の農業政策は、間違っている。」ような

イメージが、ウェブサイトや動画などで散見されます。

「農薬取締法」は、農薬の登録拒否ができる制度のはずですが、実例はあるのでしょうか。

実際は、どうなのでしょうか。
 

いずれにしろ、

現状では、因果関係を確証できないような、人に対する障害が生じた場合、

生活保護、あるいは年金保険加入時であれば障害年金、という制度に頼らざるを得ません。

既に、予防原則を法令に取り入れる条件が整っているにもかかわらず、

被害国民に対する補償制度が十分に整備されていません。

したがって、

環境への悪影響が著しいおそれ、

あるいは、人畜へのいかなる程度の被害のおそれ、

に対応するためには、法令に予防原則を取り入れる必要性がある、といえます。

今後は、
①農業生産現場の実情の理解、②法令の仕組み、③法令で保護される公務員担当者、④法令で賠償請求できる被害者、⑤法令が違憲と評価される場合、⑥十分な議論の結果の立法化の健全性、⑦議論を避ける行政運営・国民性・義務教育、⑧結果として、あるいは目的化した国民の愚民化政策、⑨理由が分からなくても、有権者が「おかしい」と過半数が気付き、決してそれを忘れなければ(=歴史は繰り返す)、世の中を良く出来る可能性がある、⑩法令に組み込まれた仕組みを国民の過半数が理解することがスタートライン、⑪法令条文ではなく、単純に国語理解力の重要性(≒法令条文は、複数回読み返せば理解できる内容です=人によって条文の理解が異なれば社会が混乱するため、そうならないように条文は具体的に明文化されています)と義務教育での「探究」への期待、などの視点からたくさん議論する必要があります。

 世の中は、あらゆる分野で大変便利な時代になりましたが、

それとは一見逆行するような、

立ち止まって過去を振り返るSDGs運動もあります(ただし、SDGsを真っ向から批判される見解もあります)。

当然のようにある自然環境に関係する事柄について、

これまでは良しとされてきたことや、見逃されてきたことなど、

SDGsは、過去の評価を検証し直す契機になっています。

しかし、自然環境は、大昔からそれほど変わることなく、同じようにあったのではないでしょうか。

したがって、

SDGsで見直そうとしていることは

ただ単に、

私たちが気付くことなく、

見過ごして来てしまったさまざまな事象を改めて見直し、深く考え直す作業なのではないでしょうか。

 

廃水浄化処理の生物処理法は、まさにその典型例です。

生物処理法の基礎部分(し尿や生活排水の浄化処理)は、

技術の進歩というよりは、

基本的には、全ての生物の生体内外を含め、

大昔からどこにでもいるような微生物群に浄化してもらう仕組みですので、

「考え方」が進化した、というべきものです。

すべての生物は、

常在細菌が、生体の内外に生息していて、

彼らのおかげで、生存し、生息しているのです。

循環型社会とは、

地球がひとつの生物のようなもの、

あるいは、ひとつの器官のように機能している、ということではないでしょうか。

 

また、何事も、

他人事ではなく、

自分のこととして何かに取り組むためには、

技術というよりも「考え方」としてとらえることは重要です。

普段関わらないような、例えば、仕事や家事や育児以外のことでも、

他人事ではなく、自分のこととして取り組むことになると、

その取り組みは具体的な改善の段階に上がることになります。

全ての人が、自分のこととして取り組むのであれば、その改善は、改革や変革へと進みます。

 

何ごとでも、

日常的には考えないようなことであっても、

その時には無知であっても、気付く機会があれば、

知る楽しさを知り、

知る努力を欠かさず、

詳しい知識がある者に聞き、

(知った者は積極的に伝え、)

自ら「考え」、

自分のこととして取り組むところまで、引き上げるのが、

民主主義の基礎になります。

 

どんな課題であっても、それを解決しようとする場合、

当然のことですが、

多くの方が関わることですから、1人だけではできませんし、

皆で話し合って、協力して進める必要があります。

無知な者同士、

あるいは片方が無知であったり、考え方に制限をかける人であったりすると、

その話し合いは、

民主主義の基礎である議論にはなりません。


議論に必要な「要素」は、無数にあります。

深い知識や論理的思考力、耳を傾ける忍耐力だけではありません。

また、議論は、

人は神のようなものでは無いため、

当然のこととして、見解の相違を前提にしていますので、

自己充足だけでなく、他者愛など、楽しいと思える要素が無いと、継続できません。

さらに、無知な者同士の議論では、単なるケンカになるかもしれません。

あるいは、無知な者が、目の前の議論を見れば、単なる言い争いにしか見えないかもしれません。

しかし、見解の相違を解消する議論が無いと、良い結果に到達しませんので、

当然のこととして、少々激しい議論は必要です。

人は神のような存在ではありませんので、すべての「要素」が備わっている方はいません。

したがって、お互いに気付くまで、議論は白熱するのが必然というものです。

議論は、たくさんの不足している「要素」を互いに補いながら、思いやりの心で進めることが必要です。

 

議論の目的は、良い結果にたどり着くことです。

基礎知識が無かったり、間違ったりしていれば、良い結果にはたどり着けません。

基礎知識を基に、お互いに、是正したり、修正・改善したりして、

より良い方向を建設的に見つけ出そうとする行為が、議論というものではないでしょうか。

 

具体的な事例として、田舎の下水道事業の無駄は、

全ての国民の皆さんが事実を正確に理解すれば、

無駄な支出を必要な分野に振り向けられることになるわけですから、

支出金額からすると、ほとんどの課題を解決できそうな規模になっています。

 

下水道事業見直しという課題は、

SDGsの基礎を形成する部分でもあります。

自然環境は、大昔から循環することで成立しています。

循環しなければ、どこかで何かが蓄積するようなことになって、普通に生活することさえできなくなってしまいます。

 

循環プロセスの重要なポイントは、

人為的な成分が循環の大きな阻害要因になる可能性があるかもしれないと、

過去の歴史を振り返って、詳しく復習すれば、誰でもが危惧することではないでしょうか。

この分野では、4大公害病や下水道事業に関係するような、さまざまな裁判の判決文の司法判断が、

議員、特に立法府の国会議員の皆さん、行政推進を担う国家公務員の皆さんの見識よりも進歩的と言えそうです。

 

なお、現状把握のため、

廃水浄化の分野で人為的な成分は、目に見える形として、数値で表すことが出来るCODやTOCが該当します。

 

廃水と同じように、

他の循環プロセスについても、誰もが学んでおくべき重要な分野、

すなわち、

義務教育の基幹分野にする必要性がある、誰もが学ぶ必要性がある、と気付くのではないでしょうか。

 

ほとんどの方が、

「循環」という視点にたどり着けると、

最終的には、森羅万象が繋がっている、というような視点で物事を見れるようになり、

皆が協力してありとあらゆる課題を解決できる、

そんな世の中になるように思います。

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

090-7312-7407

「お問合せ・ご相談フォーム」は、
24時間受け付けております。   お気軽にご連絡ください。

新着情報・お知らせ

2020/03/31
ホームページを公開しました。
2020/7/2
大型浄化槽って何?のページを公開しました。
2021/8/9
廃水浄化とSDGsの関係とは?のページを公開しました。
2021/9/12
建築基準法31条と下水道接続のページを公開しました。
2021/12/22
COD除去とは?のページを公開しました。
2022/4/19
下水道とは?のページを公開しました。
2022/5/10
下水道接続、どうあるべきか?のページを公開しました。
2022/6/19
2022/7/7
下水道接続義務・浄化槽・事実は?のページをリニューアルしました。
2022/10/11
下水道とは?のページをリニューアルしました。
2022/10/31
廃水浄化・排水規制に関わる法律のページを公開しました。
2022/12/29
浄化槽とは?のページを公開しました。
2023/1/24
下水道の運営・監査・法令のページを公開しました。
2023/3/13
SDGs対応型浄化槽のページをリニューアルしました。
2023/3/17
公共下水道の現状把握のページを公開しました。
2023/4/4
三重県亀山市との取組のページを公開しました。
2023/6/21
浄化槽とは?のページを更新しました。

※下欄の「ウェブサイト目次」以外に
「お役立ち情報」には、今後掲載予定の項目など、
一覧を掲載しています。